【番外編・速報版】公正証書遺言はウェブ会議で完結する?──制度上は認められてるけど、現場が慎重なワケ(2026年6月の運用実態)

ニュースで「公正証書遺言もオンラインでできるようになった」と見ました。うちは遠方なので、ぜひウェブ会議でお願いしたいのですが。

公証人さんから「対面でお願いします」と言われました。せっかく遠隔OKになったんじゃないんですか?

こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。

最近、こうしたご相談をいただくことが増えてきました。「公正証書遺言がオンラインで作れるようになった」というニュースをご覧になった方から、「うちもウェブ会議でお願いしたい」というお声をいただく一方で、いざ進めてみると公証人から「対面でお願いします」と言われて戸惑うということがあるようなのです。

結論から先にお伝えすると、制度としてはウェブ会議でも作成できます。ただし、遺言については実務上、まだまだ対面(来所または出張)が基本というのが、2026年6月時点実際に起こっています。実は私自身も、直近の案件で公証人から「ウェブの遠隔方式はできれば避けたい」というお話を受けたばかりです。

これまでのデジタル遺言シリーズでは、これから新設される「保管証書遺言(仮)」を中心に、制度の全体像・4方式の比較・残る紛争の種・待つか動くかの判断軸を扱ってきました。今回はその番外編・速報版として、すでに動いている「公正証書遺言のウェブ会議方式」に絞って、「制度はあるのに、なぜ現場は遺言については慎重なのか」を、私の実体験も交えてお話しします。

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目次

この記事でわかること

  • 2025年10月から始まった公正証書遺言のウェブ会議方式の中身
  • ウェブ会議が認められる「3つの要件」
  • 公正証書全般は遠隔OKなのに、なぜ遺言だけ特別に慎重なのか
  • 実際に「対面でお願いします」と言われた話
  • 今後どんな仕組みが整えば、遠隔がもっと広がるか

「デジタル遺言」には2つの流れがある

本題に入る前に、混同しやすいポイントをひとつだけ整理させてください。いま「デジタル遺言」と呼ばれているものには、実は2つの別々の流れがあります。

  • これから新設される「保管証書遺言(仮)」2028年度中の施行見込み(まだ動いていない)
  • すでに動いている「公正証書遺言のデジタル化」2025年10月1日施行済み

シリーズでこれまで詳しく扱ってきたのは①のほうでした。今回の番外編で取り上げるのは、②のすでに使える制度のほうです。「スマホだけで遺言が全部完結する」という①のイメージとは別物なので、ここを混同しないようにだけ気をつけてくださいね。

2025年10月スタート|公正証書遺言のウェブ会議方式とは

2025年(令和7年)10月1日から、公正証書の作成手続がデジタル化されました。これは公証人法等の改正(令和5年法律第53号)にもとづくもので、公正証書遺言についても次のような運用が始まっています。

  • ウェブ会議(Microsoft Teams)による遺言作成が可能に(公証人が相当と認めた場合)
  • 遺言者・公証人・証人の電子署名で作成が完結(押印が不要に)
  • 原本は電磁的記録(電子データ)として専用システムに保管

「公証役場まで通うのが大変」「遠方で足を運びにくい」という理由で遺言作成をためらっていた方にとっては、選択肢が広がる大きな改正です。なお、この仕組みが使えるのは順次指定される「指定公証人」の役場に限られており、施行直後から全国一律に同じ運用、というわけではない点も押さえておきたいところです。

ウェブ会議が使えるのは「3つの要件」がそろったときだけ

制度上、公正証書をウェブ会議で作成できるのは、次の3つの要件がすべて満たされた場合です。

  • ①嘱託人(遺言者)からの申出があること
  • ②他の嘱託人からの異議がないこと
  • ③公証人が「相当と認める」こと

実務上いちばんのカギになるのが、③の「公証人が相当と認める」という部分です。ここは公証人の裁量に委ねられていて、「申し出れば必ずウェブ会議でできる」というものではありません。遺言の場合は、この『相当性』が特に慎重に判断される、というのが今回いちばんお伝えしたいポイントです。

公正証書全般は遠隔OK、でも遺言だけは特殊で慎重なワケ

今回のデジタル化で、公正証書は全般としては遠隔(ウェブ会議)で作成できるようになりました。契約に関する公正証書なども、要件を満たせばオンラインで進められます。ところが、遺言公正証書については、同じ「公正証書」でありながら、現場の扱いが一段と慎重なのです。

その理由は、遺言公正証書が「公証人が嘱託人本人の真意と、その前提となる判断能力の有無を、慎重に確認する必要性が特に高い類型」だと位置づけられているからです。法改正の検討段階でも、「遺言公正証書をビデオ通話の方法で作ることが相当かどうかは、慎重に判断されるべき」という指摘がなされていました。

では、なぜ遺言だけそこまで慎重なのか。私が現場で感じているのは、「画面の外で起きていることが、公証人には見えない」という一点に尽きると思っています。

  • 利害関係のある家族が、カメラに映らない場所から指示や圧力をかけているかもしれない
  • 遺言者が本当に自分の自由な意思で話しているのか、画面越しでは確かめきれない
  • 「不当な影響(働きかけ)」があったかどうかが、後から争いの種になりやすい

遺言は、書いた本人が亡くなった後に効力が問題になる書類です。「本当に本人の意思だったのか」を後から検証できるよう、作成の段階で不当な影響がないことをしっかり確認しておくことが、何より大切になります。だからこそ公証人は、画面越しではなく現地で直接、その場の様子を確かめたうえで作りたいと考えるのですね。これは制度の不備というより、むしろ遺言の正しさを守るための慎重さだと、私は受け止めています。

【実体験】「対面でお願いします」と言われたケース

ある公正証書遺言の案件で、私のほうから遠隔(ウェブ会議)方式の可能性を相談したところ、公証人から次のようなお話をいただきました。

公証人A

公正証書遺言については、ウェブを用いた遠隔の方式はできれば避けたいです。現地の様子がよく分からないので。公証人が出張で伺う方式か、公証役場へお越しいただく方式の、どちらかでお願いします。

「現地の様子がよく分からない」。この一言に、遺言公正証書をめぐる慎重さのすべてが詰まっているように感じました。前章でお話しした「画面の外が見えない」懸念を、公証人ご自身の言葉で表現されたものだと思います。

結果として、この案件は対面で進めることになりました。遺言公正証書の対面ルートは、いまも大きく2つあります。

出張方式

公証人が、遺言者のご自宅・老人ホーム・介護施設・病院などに出張して作成する方式です。ご高齢や病気などで来所が難しい方に使われています。

来所方式

遺言者ご本人が公証役場へお越しになって作成する、従来からの基本の方式です。

「遠隔OKになった」と聞くと、つい「もう役場に行かなくていいんだ」と思いがちですが、遺言に関しては、いまもこの2つの対面ルートが基本です。遠隔はあくまで、対面が著しく難しい事情があるときの例外的な選択肢、という温度感だと理解しておくと、いざ進めるときに戸惑わずにすみます。

「遠隔=便利」だけでは進まない、遺言の難しさ

以前のコラムで、デジタル化が進んでも残る「紛争の種」として、遺言能力・不当な影響・遺留分という論点を取り上げました。今回の「公証人が遠隔をためらう理由」も、まさにこの「不当な影響」をどう防ぐかという論点の延長線上にあります。

便利さ(利便性)と、遺言の正しさ・真正性の担保。この2つは、ときにぶつかり合います。そして遺言においては現場が「確実性」を優先するのは、とても理にかなったことだと私は思います。せっかく作った遺言が、後から「本当に本人の意思だったのか」と争われてしまっては、本末転倒ですからね。

行政書士 後藤

「遠隔でできないなんて不便」と感じる気持ちも、よく分かります。でも、その慎重さが、結果的にご家族を守ることにつながる。そう考えると、いまの運用にも納得できる部分が大きいんです。

今後への期待|画面外の懸念まで解決できる仕組みづくり

とはいえ、私は遠隔での公正証書遺言の作成が、これからもっと広がっていくことを期待しています。遠方の方、通院中の方、施設にお住まいの方にとって、ウェブ会議で安全に遺言を作れる未来は、間違いなく大きな価値があるからです。

カギになるのは、公証人が今まさに懸念している「画面の外で何が起きているか分からない」という問題を、技術や運用の工夫でどこまで解消できるか、だと思います。

  • ライブネス認証(画面の前に本当に本人がいることの確認)
  • 室内全体を映してもらう運用(第三者が同席していないことの確認)
  • 通信が切れたときの再接続・再認証の手順整備

こうした「画面外の懸念まで解決できる仕組み」が整っていけば、遺言公正証書についても、遠隔方式を安心して選べる場面が少しずつ増えていくはずです。便利さと安全性が両立する日を、私も一行政書士として楽しみにしていますし、動きがあればまたこのコラムでお知らせしていきますね。

まとめ

今回の番外編・速報版の要点を整理します。

  • 公正証書遺言のウェブ会議方式は2025年10月1日に施行済み。ただし利用には公証人の「相当性」判断が必要
  • 公正証書は全般としては遠隔OKになったが、遺言は「真意・判断能力の確認」が特に重い類型のため、実務では今も対面(出張・来所)が基本
  • 背景には「画面の外からの不当な影響を排除しきれない」という公証人の懸念がある
  • 画面外の懸念を解消する仕組みづくりが進めば、遠隔の幅は今後広がっていくのではないかという個人的期待

「遠隔でできると思っていたのに対面と言われた」と戸惑う前に、遺言にはこういう事情があると知っておくだけで、進め方の見通しがぐっと立てやすくなります。どの方式が自分に合うか、出張・来所・遠隔のどれで進めるのがよいかは、ご事情によって変わりますので、迷ったら一度ご相談くださいね。

公正証書遺言のご相談は、ごとう行政書士事務所へ

「公正証書遺言を作りたいけれど、遠隔・出張・来所のどれで進めればいい?」
「親の遺言を、いまの体調でどう進めるか迷っている」
「ニュースの情報と、実際の運用の違いを知りたい」

という方は、お気軽にごとう行政書士事務所までご連絡ください。福岡・熊本・大分エリアは直接訪問でのご相談も対応しています。まずは無料相談から、一緒に整理していきましょう。WEB会議・LINEでのオンライン相談もOKです。

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参照情報

  • 法務省「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00064.html
  • 日本公証人連合会「2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!」:https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/20250908-2.html
  • 日本公証人連合会「2 遺言」:https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
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