その遺言で大丈夫?特別受益・寄与分から考える「もめない相続分」の決め方〜前編〜

その遺言で大丈夫?特別受益・寄与分から考える「もめない相続分」の決め方

こんにちは、ごとう行政書士事務所の後藤です。
「遺言書を書いておけば相続はうまくいくんじゃないの?」と多くの方が思っていらっしゃいますが、実は「書き方」によっては、かえって家族間の争いを引き起こすことがあります。

特に注意したいのが、法定相続分だけでは測れない「家族ごとの事情」です。
生前に援助を受けていた人、反対に献身的に介護や経営支援をしてきた人など、特別受益や寄与分と呼ばれる要素によって、相続分は調整が必要となるケースがあります。

これらを適切に考慮せずに遺言書を作成してしまうと、「不公平だ」「納得できない」という不満が生まれ、結果として相続トラブルの火種になってしまいかねません。

本コラムでは、

  • 「特別受益」「寄与分」とは何か
  • 具体的にどう計算されるのか
  • 遺言書にどのように反映させるべきか

を解説します。遺言・相続のご相談をお受けしている行政書士の視点から、「もめない遺言」のために知っておくべき基本を一緒に確認していきましょう。

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目次

1.そもそも「相続分」とは何か?

遺言書を作成するにあたって、まず押さえておきたいのが「相続分」という考え方です。相続分とは、亡くなった方の財産を、誰がどれだけ受け継ぐかという「取り分」の割合を指します。
この相続分には大きく分けて2種類があります

  • 法律で定められた「法定相続分」
  • 遺言で自由に指定できる「指定相続分」

法定相続分とは?(民法第900条)

遺言がない場合、相続は原則法律上のルールに従って進みます。その基準となるのが「法定相続分」です。

民法900条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

たとえば、配偶者と子ども2人が相続人であれば、配偶者が1/2、子ども2人が1/4ずつ、という分け方になります。

指定相続分とは?(民法第902条)

ただし、遺言書を作成すれば、法定相続分とは異なる分け方をすることも可能です。

民法902条1項(遺言による相続分の指定)
第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

つまり、「長男に多めに相続させたい」「次男は生前に十分援助したので少なくする」など、自由な意思で相続分を決めることができるのです。

遺言があれば、相続分を自由に指定できます。
ただし、自由に決められるからこそ、「どのような基準で分けるのか」を明確にしないと、後で他の相続人の不満や疑念につながります。ここで重要になってくるのが、次に解説する特別受益寄与分といった「相続分の調整要素」です。

特別受益とは? ― すでに「もらっていた」分の扱い

うちの長男は家を買うときに2,000万円援助してもらっていたのに、相続は他の兄弟と同じでいいの?

こうした疑問や不満が、相続の現場ではよく起こります。このように、被相続人(亡くなった方)が生前にある相続人へ特別に援助をしていた場合、その分を他の相続人と「平等に」扱うと不公平になります。
そこで登場するのが「特別受益(とくべつじゅえき)」という考え方です。

民法903条(特別受益者の相続分)
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

「先にもらってた人の分、ちゃんと差し引こう」という制度です!

この条文では、「すでに生前にもらっていた分」も相続財産にいったん足し戻してから、相続分を計算しましょう、というルールになっています。これを「持戻し(もちもどし)」と呼びます。

たとえば、

  • 相続財産が4,000万円
  • 長男が生前に住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けていた
  • 相続人は配偶者・長男・次男の3人(配偶者が1/2、長男が1/4、次男が1/2)

この場合、まず生前贈与1,000万円を持ち戻して、相続財産は5,000万円とみなします。

法定相続分に基づく取り分は

  • 配偶者:5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
  • 長男:5,000万円 × 1/4 = 1,250万円
  • 次男:5,000万円 × 1/4 = 1,250万円

そして、長男はすでに1,000万円を受け取っていたので、今回の相続では:

  • 長男:1,250万円 − 1,000万円 = 250万円
  • 配偶者:2,500万円
  • 次男:1,250万円

となります。

持戻し免除とは? ― 遺言で「持戻し不要」にできる

実は、特別受益を「相続分の計算に含めない」ことも可能です。
それが、民法第903条3項にある「持戻し免除の意思表示」です。

たとえば、
「長男に生前2,000万円援助したが、これは相続分に含めない」
といった意思を、遺言書で明確に書いておくことで、他の相続人からの異議を防ぐことができます。

民法903条3項(特別受益者の相続分)
(1項〜2項は前述の通り、特別受益に関するルール)
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。

配偶者居住権との関係にも注意

被相続人の死亡後も、配偶者が家に住み続けられる「配偶者居住権」(民法第1028条以下)は、形式上「贈与」や「遺贈」に近い性質を持ちます。この権利を与えたことで、他の相続人の取り分が実質的に減る場合もあります。

つまり、

  • 特別受益(住宅贈与)
  • 配偶者居住権(居住価値の保障)

この2つが重なる場合には、相続人間での公平性や評価額のバランスに注意が必要です。

「配偶者居住権」については、後編で詳しく解説していきます!

特別受益の扱いに気をつけましょう。そして他にも気をつけるべき「寄与分」について

今回は、相続分を決める際に重要な「特別受益」についてご紹介しました。

生前に特別な援助を受けていた相続人がいる場合、その分を考慮しない遺言書では「不公平だ」と不満が噴出し、相続トラブルの原因になることがあります。特別受益の持戻しや免除、さらには配偶者居住権との関係まで含めて、遺言書には具体的かつ丁寧な記載が求められるのです。

ただし、相続分の調整が必要な場面はそれだけではありません。
「長年介護をしてきた」「親の事業を支えてきた」など、被相続人の財産形成に貢献した相続人がいる場合には、「寄与分(きよぶん)」という別の制度が関係してきます。

本コラムの後編では

  • 「親の介護をしてきたのに、相続が平等で納得できない」と感じる方へ
  • 寄与分の考え方と具体的な調整方法
  • 特別受益と寄与分が両方ある場合の相続分計算
  • 2023年民法改正で定められた「請求期限」にも要注意

といったテーマを取り上げ、「もめないための遺言書づくり」の後半の内容をお届けします。お楽しみに!

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