その遺言で大丈夫?特別受益・寄与分から考える「もめない相続分」の決め方
こんにちは、ごとう行政書士事務所の後藤です。
「遺言書を書いておけば相続はうまくいくんじゃないの?」と多くの方が思っていらっしゃいますが、実は「書き方」によっては、かえって家族間の争いを引き起こすことがあります。
特に注意したいのが、法定相続分だけでは測れない「家族ごとの事情」です。
生前に援助を受けていた人、反対に献身的に介護や経営支援をしてきた人など、特別受益や寄与分と呼ばれる要素によって、相続分は調整が必要となるケースがあります。
これらを適切に考慮せずに遺言書を作成してしまうと、「不公平だ」「納得できない」という不満が生まれ、結果として相続トラブルの火種になってしまいかねません。
本コラムでは、
- 「特別受益」「寄与分」とは何か
- 具体的にどう計算されるのか
- 遺言書にどのように反映させるべきか
を解説します。遺言・相続のご相談をお受けしている行政書士の視点から、「もめない遺言」のために知っておくべき基本を一緒に確認していきましょう。
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1.そもそも「相続分」とは何か?
遺言書を作成するにあたって、まず押さえておきたいのが「相続分」という考え方です。相続分とは、亡くなった方の財産を、誰がどれだけ受け継ぐかという「取り分」の割合を指します。
この相続分には大きく分けて2種類があります
- 法律で定められた「法定相続分」
- 遺言で自由に指定できる「指定相続分」
法定相続分とは?(民法第900条)
遺言がない場合、相続は原則法律上のルールに従って進みます。その基準となるのが「法定相続分」です。
たとえば、配偶者と子ども2人が相続人であれば、配偶者が1/2、子ども2人が1/4ずつ、という分け方になります。
指定相続分とは?(民法第902条)
ただし、遺言書を作成すれば、法定相続分とは異なる分け方をすることも可能です。
つまり、「長男に多めに相続させたい」「次男は生前に十分援助したので少なくする」など、自由な意思で相続分を決めることができるのです。
特別受益とは? ― すでに「もらっていた」分の扱い

うちの長男は家を買うときに2,000万円援助してもらっていたのに、相続は他の兄弟と同じでいいの?
こうした疑問や不満が、相続の現場ではよく起こります。このように、被相続人(亡くなった方)が生前にある相続人へ特別に援助をしていた場合、その分を他の相続人と「平等に」扱うと不公平になります。
そこで登場するのが「特別受益(とくべつじゅえき)」という考え方です。
「先にもらってた人の分、ちゃんと差し引こう」という制度です!
この条文では、「すでに生前にもらっていた分」も相続財産にいったん足し戻してから、相続分を計算しましょう、というルールになっています。これを「持戻し(もちもどし)」と呼びます。
たとえば、
- 相続財産が4,000万円
- 長男が生前に住宅購入資金として1,000万円の贈与を受けていた
- 相続人は配偶者・長男・次男の3人(配偶者が1/2、長男が1/4、次男が1/2)
この場合、まず生前贈与1,000万円を持ち戻して、相続財産は5,000万円とみなします。
法定相続分に基づく取り分は
- 配偶者:5,000万円 × 1/2 = 2,500万円
- 長男:5,000万円 × 1/4 = 1,250万円
- 次男:5,000万円 × 1/4 = 1,250万円
そして、長男はすでに1,000万円を受け取っていたので、今回の相続では:
- 長男:1,250万円 − 1,000万円 = 250万円
- 配偶者:2,500万円
- 次男:1,250万円
となります。
持戻し免除とは? ― 遺言で「持戻し不要」にできる
実は、特別受益を「相続分の計算に含めない」ことも可能です。
それが、民法第903条3項にある「持戻し免除の意思表示」です。
たとえば、
「長男に生前2,000万円援助したが、これは相続分に含めない」
といった意思を、遺言書で明確に書いておくことで、他の相続人からの異議を防ぐことができます。
配偶者居住権との関係にも注意
被相続人の死亡後も、配偶者が家に住み続けられる「配偶者居住権」(民法第1028条以下)は、形式上「贈与」や「遺贈」に近い性質を持ちます。この権利を与えたことで、他の相続人の取り分が実質的に減る場合もあります。
つまり、
- 特別受益(住宅贈与)
- 配偶者居住権(居住価値の保障)
この2つが重なる場合には、相続人間での公平性や評価額のバランスに注意が必要です。
特別受益の扱いに気をつけましょう。そして他にも気をつけるべき「寄与分」について
今回は、相続分を決める際に重要な「特別受益」についてご紹介しました。
生前に特別な援助を受けていた相続人がいる場合、その分を考慮しない遺言書では「不公平だ」と不満が噴出し、相続トラブルの原因になることがあります。特別受益の持戻しや免除、さらには配偶者居住権との関係まで含めて、遺言書には具体的かつ丁寧な記載が求められるのです。
ただし、相続分の調整が必要な場面はそれだけではありません。
「長年介護をしてきた」「親の事業を支えてきた」など、被相続人の財産形成に貢献した相続人がいる場合には、「寄与分(きよぶん)」という別の制度が関係してきます。
本コラムの後編では
- 「親の介護をしてきたのに、相続が平等で納得できない」と感じる方へ
- 寄与分の考え方と具体的な調整方法
- 特別受益と寄与分が両方ある場合の相続分計算
- 2023年民法改正で定められた「請求期限」にも要注意
といったテーマを取り上げ、「もめないための遺言書づくり」の後半の内容をお届けします。お楽しみに!
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