あなたの遺言、大丈夫?相続トラブルを防ぐためには
こんにちは、ごとう行政書士事務所の後藤です。
複数回にわたってご案内している遺言相続のコラム。実は、せっかく遺言書を残していても「内容に不備があった」「配慮が足りなかった」ことで、かえって相続人同士のトラブルを引き起こしてしまうケースも少なくありません。
今回は、遺言書の「中身」に焦点を当て、書いておくべき項目、避けるべき表現、そしてトラブルを未然に防ぐための考え方などを、お伝えできる範囲でまとめていきます。正しく伝えるための遺言、そして家族が安心できる遺言を一緒に考えてみませんか?
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遺言書に必ず書くべき「基本の項目」
遺言書は「思いを残す手紙」ではなく、法律上の効力を持つ正式な文書です。書きたいことを自由に書けばよいというものではなく、一定の法的項目を適切に盛り込む必要があります。
ここでは、気をつけるべき基本的な記載方法などをいくつかご紹介していきます。
相続分の指定・遺産分割方法の視点
遺言書において最も重要な記載項目が「相続分の指定」です。法定相続分に従わず、自分の意思で「誰に何を相続させるか」を明示できることは、遺言書の最大の効力といっても過言ではありません。
たとえば、
- 「長女には自宅を相続させる」
- 「長男にはメイン口座の預金を引き継がせる」
など、財産ごとに誰にどのように分けるかを明記することで、相続人間の協議が不要になり、トラブルの防止にもつながります。
財産の特定は「曖昧にしない」のが鉄則
財産の記載については、できる限り具体的に特定することが大切です。
土地の場合の記載方法
1 土地
所在 福岡市中央区○丁目
地番 ○番地
地目 宅地
地積 ○○○・○○平方メートル
特定の金融資産の場合の記載方法
「〇〇銀行〇〇支店に対する預金債権の全て」
特定の自動車の場合の記載方法
第○条 遺言者は、遺言者の有する下記の自動車を、妻山田花子に相続させる。
登録番号 福岡○○あ1234
種 別 普通
車 名 ○○
型 式 ○ー△△
車台番号 ××××
このように、明確に財産を指定しないと、相続手続きが滞ったり、誰が相続すべきかを巡って争いが生じたりする可能性があります。
相続人以外への財産の遺贈も可能
相続人以外の人、たとえば、長年介護をしてくれた親族や、内縁の配偶者、信頼する友人などに財産を残したい場合は、「遺贈」という方法で遺言書に記載することができます。また、特定の団体(例:NPO法人、寺社、地域活動団体など)に寄付をすることも可能です。
このように、誰に・どの財産を・どのように渡すのかを「具体的かつ明確に」記載することが、基本中の基本です。次は、よく問題となる「遺留分」について触れていきます。
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「遺留分」に配慮した内容が大切
遺言書を作成する際、特定の相続人に多くの財産を遺したいという希望があるかもしれません。しかし、遺言者の意思を尊重する一方で、法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が法律で保障されています。遺留分に配慮しない遺言書は、後にトラブルの原因となる可能性があります。
遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人のうち、配偶者や子、直系尊属(父母や祖父母など)に認められた、相続財産の一定割合の取得権です。兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
「遺留分は、①遺贈・贈与を受けなかった遺族に対する生活保障や、②遺産の形成に貢献した遺族の潜在的持分の清算という機能(省略)③共同相続人間の公平という確保という機能を担っている。」
潮見佳男「民法(全)」711頁(有斐閣,第3版,2022年)
法律学の専門書からの引用で少々難しいのですが、期待していた相続財産が、遺言などにより無くなった・減ってしまった相続人に対する生活保障のようなものと考えていただけると良いのではないでしょうか。
遺留分の割合は以下のとおりです!
- 配偶者や子が相続人の場合:法定相続分の1/2
- 直系尊属のみが相続人の場合:法定相続分の1/3
たとえば、配偶者と子が相続人である場合、配偶者の法定相続分は1/2であり、その1/2が遺留分となります。つまり、配偶者の遺留分は相続財産全体の1/4となります。
遺留分を侵害する遺言書のリスク
遺言書で特定の相続人に全財産を相続させる内容にした場合、他の相続人の遺留分を侵害することになります。遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができ、遺言書の内容通りに相続が進まない可能性があります。
遺留分に配慮した遺言書作成のポイント
遺留分を侵害しないようにするためには、以下の点に注意して遺言書を作成することが重要です
- 相続人の遺留分を計算する:相続人の構成に応じて、各相続人の遺留分を正確に把握しましょう。
- 遺留分を考慮した財産配分を行う:遺留分を侵害しないよう、各相続人への財産配分を調整します。
- 付言事項で思いを伝える:遺言書に付言事項を加え、相続人への感謝や財産配分の理由を伝えることで、理解を得やすくなります。ただし、あくまで補足的な役割であることには留意が必要です。
遺留分に配慮した遺言書を作成するには、一定の法律の知識が必要です。行政書士などの専門家に相談することで、法的に有効で、かつ相続人間のトラブルを防ぐ遺言書を作成することができますよ。
遺言執行者の指定と死後事務委任契約について
遺言書を作成する際、内容の明確化だけでなく、その内容を確実に実行するための体制を整えることが重要です。特に、遺言執行者の指定と死後事務委任契約の締結は、遺言者の意思を尊重し、相続手続きを円滑に進めるための有効な手段です。
遺言執行者とは?
遺言執行者は、遺言書に記載された内容を実現するために必要な手続きを行う人物です。遺言執行者の主な役割には、以下のようなものがあります
- 遺言書の内容に従った財産の分配
- 相続人の調査と確定
- 預貯金の払い戻しや分配
- 不動産の登記申請手続き
- 子どもの認知などの身分行為
- 保険金の受取人変更
遺言執行者を指定することで、相続人間のトラブルを防ぎ、遺言者の意思を確実に実現することが可能となります。
死後事務委任契約とは?
死後事務委任契約は、遺言者が亡くなった後の事務手続きを、信頼できる第三者に委任する契約です。主な内容には、以下のようなものがあります
- 葬儀や納骨の手配
- 住居の解約や遺品整理
- 公共料金や各種契約の解約手続き
- SNSやメールアカウントの削除
- ペットの引き渡し
この契約を締結することで、遺族の負担を軽減しながらも、遺言者の希望に沿った死後の対応が可能となります。
遺言書の工夫と、その他の終活手段について
遺言書は「一度書けば一生使える」といいきれないところもあります。時間の経過とともに、家族構成や財産内容、法律そのものが変わる可能性があるため、一般的には定期的な見直しと更新が必要になることもあるんです。もちろん、書き方に工夫をすることで一定の書き直しを防ぐこともできます。専門家に頼むことで、ある程度のリスクを回避できる遺言書を作成することができますが、どうしても変更が必要になるケースもあります。
変更が主体的に必要となる主なケース
- 相続人の増減(結婚・離婚・出生・死亡など)
- 財産内容の変化(不動産の売買、預金の移動、株式・債券の増減など)
- 相続人との関係性の変化(疎遠になったなど)
たとえば、5年前に作成した遺言書に記載されていた不動産が、現在ではすでに売却されているといったケースはよくあります。そのような状態で遺言が執行されると、内容の一部が実行不能になり、その部分についてのみ「遺言書が撤回された」として扱われます。遺言書そのものが無効になるわけではありませんのでご安心ください。
そして、遺言書の書き直しや撤回は、もちろん可能です。たとえば、新しい遺言書を作成し、「以前の遺言は全て撤回する」と明記すれば、それまでの内容はすべて無効となり、最新の遺言が有効になります。
遺言書以外にも考えたい終活の選択肢
遺言書だけではカバーしきれない分野や、より柔軟な財産管理を希望する場合には、他の制度との併用も検討するとよいでしょう。
家族信託
高齢期に備えて、自身の財産を特定の受託者(信頼できる家族など)に託し、管理・運用・処分を任せる制度です。認知症対策としても注目されています。
成年後見制度
判断能力が低下した場合に、代わって契約や財産管理を行ってくれる制度です。遺言とは別に、生前の意思能力低下に備える手段となります。こちらも認知症対策としても注目されています。
死後事務委任契約
先ほど紹介した通り、葬儀・納骨・遺品整理など、法律上の「相続」に含まれない事務を委任できる制度です。遺言だけでは対応しきれない「死後の手続き」も計画的に進められます。
確かな遺言や各種手続きで、想いを形に。
遺言書は、ただ「書けば安心」というものではありません。
誰に、どの財産を、どのような理由で託すのか。そして、それが法律に沿った内容か、相続人の気持ちにも配慮されているか。そうした「中身」の整備があって初めて、遺言は本当の意味で遺される人の力になるのです。
そして何より大切なのは、「書いた人の思いが正しく伝わり、家族が安心して手続きを進められるようにしておくこと」。
そのためには、専門家とともに内容を確認しながら、「伝える力のある遺言書に仕上げる」ことが、何よりの備えになると私は考えています。
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