そもそも遺言って何のため? 遺言書を作る目的を知っておこう。

そもそも遺言って何のため? 遺言書を作る目的を知っておこう。

こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。今回から少し「遺言」についていくつかコラムを書かせていただきます。

「遺言書」と聞くと、人生の終わりに向けた重たい話のように感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、家族や大切な人に対して自分の「意思」を正確に伝える大切な手段です。遺言が準備されていないことで家族間のトラブルが起こるケースも少なくありません。
本記事では、遺言書の法的な意義やその必要性について、行政書士の立場からやさしく丁寧に解説します。元気なうちに「書いておく」ことが、残された家族への最期の思いやりになるかもしれません。

\ 遺言・相続でお困りの方はまずはお気軽にご相談ください。/

目次

遺言とは何か? ― 法律上の定義と効力

「遺言(ゆいごん・いごん)」とは、自分が亡くなった後の財産の分け方や、家族・関係者に対して伝えたい意思をあらかじめ文章で残す制度です。日本の民法では、遺言の法的効力を以下のように定めています。

いきなり余談ですが、「遺言」について一般的には「ゆいごん」と言うことが多いと思いますが、法律上は「いごん」と読みます。そのため専門家や法律に詳しい人は「いごん」と言うことが多いんです。

民法第960条(遺言の方式)
「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。」

つまり、遺言書は民法が定めるルールに従って作成されなければ効力がなく、ただのメモや口約束では法的に扱われないという点が重要です。

遺言書に記載できる内容には、たとえば次のようなものがあります。

  • 相続人の中で、誰に何を相続させるかの指定(遺産分割の指定)
  • 相続人以外の人に財産を譲る(遺贈)
  • 相続人の排除や認知
  • 未成年の子の後見人の指定
  • 遺言執行者の指定 など

ちょっと難しい言葉がたくさん出てきましたね。今の段階で分からないことがあっても大丈夫です。今後少しずつコラムで解説しますし、専門家に相談すると優しく教えてくれるはずです。

このように、遺言とは単なる「財産の分け方のメモ」ではなく、法律に基づいて家族や大切な人への想いを形にする正式な法的文書です。行政書士としても、こうした遺言の意味を理解した上で適切な助言を行うことが、サポートの第一歩だと思っています。

遺言がなかったらどうなる? ― 法定相続との違い

遺言書がない場合、亡くなった方の財産は「法定相続」によって分けられます。これは、民法で定められたルールに従って、相続人とその相続分が決まる制度です。遺言書がない場合、原則としてこの法定相続分に従って遺産が分配されます。

法定相続人の範囲と順位

民法では、相続人となる人の範囲と順位が定められています。配偶者は常に相続人となり、その他の相続人は以下の優先順位で決まります。

  1. 子(直系卑属)
  2. 直系尊属(父母や祖父母)
  3. 兄弟姉妹

上位の順位に該当する相続人がいる場合、下位の順位の者は相続人となりません。

法定相続分の割合

法定相続分の割合は、民法第900条に定められています。以下は主な組み合わせとその相続分です。

  • 配偶者と子が相続人の場合:各1/2
  • 配偶者と直系尊属が相続人の場合:配偶者2/3、直系尊属1/3
  • 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

また、同順位の相続人が複数いる場合は、原則としてその相続分を均等に分けます。

ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の2分の1とされます。

民法第900条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

法定相続によるトラブルの可能性

法定相続分に従って遺産を分ける場合、実際の遺産の内容や相続人の関係性によっては、以下のようなトラブルが生じることがあります。

  • 特定の相続人が被相続人の介護や看護を長年行っていたが、他の相続人と同じ割合での相続となり、不公平感が生じる。
  • 遺産の大部分が不動産であり、現金化が難しいため、相続人間での分割が困難になる。
  • 被相続人と内縁関係にあった人が法定相続人に含まれず、生活の基盤を失う。

これらの問題は多くの場合、遺言書を作成することで、被相続人の意思を明確に示し、相続人間のトラブルを未然に防ぐことができます。

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遺言書を書くメリット ― 安心と意思表示の手段

遺言書を作成することはメリットが多くありますので、まずはその例をいくつか挙げていきます。

1.自分の意思で遺産の分け方を決められる

遺言書を作成することで、法定相続分にとらわれず、自分の意思で遺産の分け方を指定できます。たとえば、特定の相続人に多くの財産を残したい場合や、相続人以外の人に財産を譲りたい場合など、柔軟な対応が可能です。
※遺留分などいくつか注意しておかないといけない点はありますので、今後解説していきます。

民法第902条(相続分の指定及び指定の委託)
被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

2.相続トラブルを予防できる

遺言書があることで、相続人間の「遺産分割協議」を省略できるため、トラブルの予防につながります。特に、家族構成が複雑な場合や、特定の相続人に特別な配慮をしたい場合など、遺言書によって明確な意思表示をすることが重要です。

3.相続手続きの負担を軽減できる

また、相続人が遺産分割協議を行う必要がなくなるということにより、相続手続きの負担が軽減されます。その他にも、遺言書内で遺言執行者を指定することで、相続手続きが円滑に進む可能性が高まります。

民法第1006条(遺言執行者の指定)
遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。

4.相続人以外の人へ遺産を遺せる

法定相続人以外の人に財産を遺したい場合、遺言書によって遺贈することが可能です。たとえば、内縁の配偶者長年お世話になった人など、法定相続人でない人にも財産を譲ることができます。また、残された大切なペットに対して十分なケアをしてほしい、応援しているNPO法人や団体に寄付をしたい、といった形も可能です。

民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。

5.相続税対策ができる

遺言書を作成することで、相続人の方の相続税の負担を軽減するための対策を講じることができます。

相続税対策のご相談については、税理士の独占業務となり、行政書士が行うことができません。当事務所に遺言・相続のご相談をいただく場合、相続税対策については提携の税理士の先生をご紹介させていただき、ご一緒に遺言書の設計をいたします。

遺言書は、単なる財産分配の指示書ではなく、自分の意思を明確に伝えるための重要な手段です。家族や大切な人への思いやりを形にするためにも、遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。

遺言書は『いつ』書けばいい? ― 判断能力と作成時期

遺言書の作成を検討する際、「いつ書けばよいのか」という疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。遺言書は、将来の相続に備えるための重要な手段となるため、思い立ったときに準備を始めるのがおすすめです。

遺言能力の要件

遺言書を有効に作成するためには、遺言者が「遺言能力」を有している必要があります。「遺言能力」とは、遺言の内容を理解し、その結果を判断できる能力を指します。民法では、遺言能力に関して以下のように定められています。

民法第961条(遺言能力)
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

また、遺言者が遺言をする時においてその能力を有しなければならないことも定められています。

民法第963条(遺言者の能力)
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

つまり、作成時に遺言の内容を理解し、判断できる状態であることが必要です。この「能力」は年齢ではなく、その時点の精神状態や判断力の有無によって評価されます。

亡くなる直前の遺言はトラブルの火種になることも

高齢の方や、病床に伏している方が亡くなる直前に作成した遺言書は、たとえ形式が整っていても、相続人の一部から「本当に本人の意思だったのか?」と疑われる可能性があります。こうした場合、相続人が「遺言は無効だ」として家庭裁判所に遺言無効確認の訴訟を提起することがあり、実際に裁判例も多く見られます。
遺言無効が主張される典型的な理由には以下があります

  • 認知症や脳疾患で遺言能力(遺言について判断するに足りる能力)が疑われる
  • 周囲の相続人による強い影響があった
  • 病状が重篤で、理解力が低下していた可能性があるなど

遺言書を作成したつもりでも、それが無効とされてしまっては本末転倒です。そうならないためにも、「元気なうちに作る」ことが最も安全で確実な選択です。

こんなときこそ作成を検討するべき

遺言書の作成に「早すぎる」ということはありません。以下のようなタイミングは、検討すべきよいきっかけになると思います。

  • 子どもが独立したとき
  • 退職後やセカンドライフを意識し始めたとき
  • 配偶者や親族が亡くなったとき
  • 財産(不動産、預貯金等)に大きな変化があったとき
  • 持病や高齢により今後が心配になったとき

判断能力がしっかりしている時点で作成すれば、将来「遺言が無効とされる」リスクも最小限に抑えられます。

遺言書は一度きりではない。定期的な見直しを

「一度作ったら終わり」ではなく、ライフステージの変化に応じて内容を見直すことも大切です。
遺言書は、何度でも書き直しが可能ですし、最新の日付のものが法的に有効とされます。
そのため、前述した「検討すべきタイミング」が訪れた際に、その都度検討し直すのをおすすめします。

民法第1023条1項(前の遺言と後の遺言との抵触等)
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

遺言書にはどんな種類があるの? ― まずは全体像を知っておきましょう

ここまでで、「なぜ遺言書を書くべきなのか」「いつ書くべきなのか」についてご紹介してきました。では実際に遺言書を書く場合、どのような方法で書けばよいのでしょうか?
遺言書には法律上、次のような種類があります。

  • 自筆証書遺言(本人が原則手書きで作成する方式)
  • 公正証書遺言(公証人の関与のもとで作成される方式)
  • 秘密証書遺言(内容を他人に見せず、遺言の存在だけを公証人に証明してもらう方式)

それぞれにメリットとデメリットがあり、どの方式を選ぶかによって、手続きの流れや安全性、費用負担、家族への影響も変わってきます。

特に、2020年から始まった法務局による自筆証書遺言の保管制度は、手軽さと安全性のバランスが取れた選択肢として注目されています。

ただし、自筆証書遺言では形式の不備があると遺言が無効になる可能性もあるため、「知っておくべきポイント」や「よくある落とし穴」を事前に押さえておくことが大切です。

また、法的に間違いのない遺言を作成できるうえ、トラブルにもなりにくい点で公正証書遺言も魅力的な選択肢と言えるでしょう。

次回のコラムでは、以下のような内容をわかりやすく解説する予定です。

  • 自筆・公正証書・秘密証書の違いと選び方
  • 2020年以降の法改正と新制度の活用
  • 作成時に注意すべき要件と実務のコツ
  • 実際に書くときに「何を書けばいいのか」
  • 行政書士に依頼することで得られる安心感

遺言書は、正しく作成すれば家族に安心を残す法的ツールになりますが、形式を誤ると、思いが届かずに終わってしまうこともあります。次回は失敗のない遺言書を作るための「作り方」をお話ししていきます!

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