こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。
最近、「遺言書がスマホで書けるようになるって、本当ですか?」 という質問をいただきました。そこでこのコラムを書いています。笑
同じようにニュースや新聞で「デジタル遺言」という言葉を目にされた方も多いのではないでしょうか。
「手書きしなくてもOKに」
「自宅からオンラインで作成可能に」
「押印不要へ」
見出しだけを並べると、なんだか明日にでも使えそうな印象を受けます。でも実際にはどこまで決まっていて、いつから使えるのか。そして「今、遺言を用意したい人」は待つべきなのか、動くべきなのか。この記事では、そのあたりを整理していきます。

父が『遺言はデジタルになるって聞いたから、それまで書かなくていいや』と言っていて、止めたほうがいいのか迷っています
結論からお伝えすると、「待ってはいけない」 場面の方が多いです。理由はこの記事の最後にしっかりお話しします。
今回から複数回にわたって、2026年の遺言制度改正について、ニュースよりもちょっと深く、でも難しくしすぎないで解説していきます。福岡・熊本・大分を中心に許認可と遺言・相続のサポートをしている行政書士として、できるだけかみくだいてお話ししますので、ぜひゆっくりご覧ください。
この記事でわかること(ダイジェスト)
- いま話題の 「デジタル遺言」は正式名称ではないこと。本命は「保管証書遺言(仮)」という新しい方式。
- 2025年10月にはもう始まっている「遺言のデジタル化」(公正証書遺言)と、2028年前後に施行される「デジタル遺言(保管証書遺言)」は、別ものであること。
- 現時点では 新方式はまだ使えないこと。「制度ができるまで待つ」が正解の人と、そうでない人の違い。
結論:2つの「遺言のデジタル化」が別々に進んでいます
最初に、いちばん混乱しやすい部分から整理させてください。
「デジタル遺言」というキーワードの裏側では、実は まったく別の2つのデジタル化 が進んでいます。
| ①公正証書遺言のデジタル化 | ②保管証書遺言の新設(いわゆるデジタル遺言) | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 既存制度の手続きを電子化 | 新しい遺言方式を創設 |
| 根拠 | 公証人法等の改正(施行済み) | 民法改正案(令和8年4月3日閣議決定) |
| いつから | 2025年10月1日〜 すでに使える | 公布から3年以内=2028年前後(見込み) |
| できること | 公証役場での遺言作成が、Web会議でも可能に/電子署名・電子原本保管 | スマホ・PCで作成した遺言を、法務局で本人確認・口述のうえ保管 |
| 誰が関与 | 公証人+証人2名 | 遺言書保管官(法務局) |
ニュースで「遺言がデジタル化」と報じられるとき、どちらの話をしているのかが抜けていることが非常に多いです。結果として、①の話を聞いて「もう始まっているんだ!」と思った人と、②の話を聞いて「まだ先の話か」と思った人がそれぞれいるようです。では、この2つの中身を順に見ていきましょう。
【すでに使える】公正証書遺言のデジタル化(2025年10月〜)
まずは①の、すでに始まっている方からです。
2025年(令和7年)10月1日に、公正証書遺言を含む公正証書の作成手続きが、正式にデジタル化されました。日本公証人連合会からも正式なお知らせが出ています。
具体的には、こんな変化が起きています。
- Web会議(Microsoft Teams)を使ったリモート作成が可能に。高齢・病気・遠方の方が、自宅や施設から公証人と面談して遺言を作れるようになりました
- 公証人・遺言者・証人の電子署名で作成が完結
- 原本はPDF形式の電子データとして、専用システム上に保管
ただし、すべてオンラインで完結するわけではありません。公証人が「リモートでの本人確認・意思確認が相当である」と判断しなければ、従来通りの対面手続きになります。
たとえば、認知機能の低下が懸念される場合や、本人確認がリモートでは十分にできないと判断された場合は、これまで通り公証役場に出向いて作成することになります。この例外運用の考え方は、後で紹介する②の制度でも重要になってくるポイントです。
ここでのポイント
- 「公正証書遺言はもうオンラインで作れる」のは事実。ただし公証人が「相当」と認めた場合に限る
- 「遺言のデジタル化=何もかもスマホで完結」ではない
- 費用は従来の公正証書遺言と同水準(証人2人も従来どおり必要)
【これから】新設される「保管証書遺言」(=いわゆるデジタル遺言)
ここからが、いま「デジタル遺言」としてメディアで取り上げられている②の話です。
正式名称(仮)は「保管証書遺言」。令和8年1月20日に法制審議会の部会が要綱案を取りまとめ、令和8年4月3日に民法改正案として閣議決定されています。
ざっくりまとめると、次のような制度です。あくまでも現時点での内容なので変更の可能性もあります。
- 遺言の本文を 紙でも、電磁的記録(電子データ)でも作成可能
- 電子データで作る場合は 電子署名を付す ことが前提
- 作成した遺言書を 法務局(遺言書保管官)に保管申請する
- 申請時に 本人確認と全文の口述(読み上げ)を行う
- 原則は出頭、例外的にWeb会議方式(ただし「不当な影響のおそれ」があれば出頭扱い)
- 保管された遺言書は 家庭裁判所での検認が不要
- 死亡後、相続人は 閲覧・証明書交付を請求でき、他の相続人にも通知される
要点は、「スマホ・PCで作る」ことそのものより、「法務局が関与して本人確認と口述を制度化している」 という点です。単なる電子化ではなく、遺言が本物であることの担保のためですね。
いつから使える?現状の予定
「で、結局いつ使えるの?」という一番気になる部分を整理します。
| 時点 | 何が起きた・起きる |
|---|---|
| 2025年(令和7年)7月15日 | 法制審議会 民法(遺言関係)部会 中間試案公表 |
| 2025年(令和7年)10月1日 | 公正証書遺言のデジタル化 施行 |
| 2026年(令和8年)1月20日 | 要綱案取りまとめ(法務省) |
| 2026年(令和8年)4月3日 | 民法改正案 閣議決定(通常国会提出へ) |
| ここから → | 国会審議 → 成立 → 公布 → 公布から3年以内に施行 |
| 施行見込み | 2028年前後(詳細時期は未確定) |
つまり、2026年4月時点では、新しい「保管証書遺言」はまだ使えません。国会で審議・成立してから、施行までさらに3年以内の移行期間が設けられています。
その間に、ファイル形式・電子署名の方式・手続き運用の細部が省令で具体化されていく予定です。
「スマホで書けば有効」は本当?よくある誤解を先に潰しておく
ここまでで、なんとなく全体像は見えてきたでしょうか。
最後に、いちばん誤解されやすいポイントを3つだけ、先にお伝えしておきます。
誤解①「2026年からスマホで遺言が書ける」
いいえ。まだ使えません。2026年は制度設計の年です。国会通過後に公布され、そこから3年以内に施行されます。
誤解②「自筆証書遺言もWordで作れるようになる」
いいえ。今回の改正案では自筆証書遺言の 押印要件は削除される方向ですが、「全文・日付・氏名の自書(手書き)」という骨格は残ります。「Wordで全部打ってOK」ではありません。
(※現行制度でも、財産目録だけは2019年の改正でパソコン作成が認められています。)
誤解③「クラウドに保存しておけば遺言になる」
いいえ。保管証書遺言は法務局への保管申請が必須です。スマホやクラウドに入れておくだけでは、どれだけ電子署名が付いていても遺言としての効力は発生しません。
この3つの誤解は、すでにご相談の現場で何度も出てきています。ニュースの見出しだけをうのみにしてしまうと、判断を誤るので要注意です。
待つべき人/待たない方がいい人
ここまで読んでくださった方の中には、「じゃあ、私は制度施行を待った方がいいの?それとも今、書いた方がいいの?」という疑問が浮かんでいるはずです。一般論としての整理は、次のとおりです。
待ってもそれほどリスクが大きくない方
- 60代前半までで、持病もなく、家族構成も財産構成もシンプル
- 相続人同士の関係が良好
- 法務局や公証役場にほぼ問題なく出向ける
- 2028年まで念のための遺言を書かなくても生活に大きな影響がない
待たない方がいい方(今すぐ動いた方が良い方)
- 70代以降、または持病・入退院の可能性がある
- 法定相続とは違う配分(特定の子に多めに残したい、家族以外に遺贈したい等)を考えている
- 不動産・事業・金融資産など争点化しやすい財産がある
- そもそも何年先のことかは誰にもわからない、というリアルな時間的リスクを感じる
特につ目以降に当てはまる場合は、制度施行を待つリスクの方が大きい ことが多いです。
このあたりの判断は、「あなたの状況だと、公正証書遺言か/自筆証書遺言+保管制度か/2028年まで待つか」の3択を具体的に検討する話になります。一般論では言い切れない部分なので、また改めてまとめてコラムとしていきたいと思います。
最後に
- 「遺言のデジタル化」は、① 2025年10月に施行済みの公正証書の電子化と、② 2028年前後施行見込みの「保管証書遺言」の新設、まったく別の2本立てで進んでいる。
- 保管証書遺言は法務局の関与・本人確認・口述が必要で、「スマホで作って保存すればOK」という制度ではない。
- 制度ができるまで待てる人は限られる。いまの状況で遺言が必要かどうかは、家族構成・財産・健康状態で判断する。
まずは、「自分(あるいは親)が、待つべきか、今から動くべきか」を、確認してみましょう。
- 年齢は?
- 健康状態は?
- 相続人の数と関係性は?
- 不動産・事業など、後から整理が必要なものがあるか?
「うちの場合、待つべきか動くべきか判断がつかない」「まずは何か相談してみたい」という方は、お気軽にごとう行政書士事務所までご連絡ください。福岡・熊本・大分エリアは直接訪問でのご相談も対応しています。Zoom・Teams・LINEでのオンライン相談もOKです。
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