酒類小売業免許とは?店舗でお酒を売るための手続き〜免許の取得条件と注意点を解説〜

酒類小売業免許とは?店舗でお酒を売るための手続き〜免許の取得条件と注意点を解説〜

こんにちは。ごとう行政書士事務所の後藤遼太です!

最近では、小規模な飲食店の方や個人経営のEC事業者の方も、「お酒を仕入れて販売してみたい」という方が増えてきました。確かに、ビールや日本酒、ワインなどを商品ラインナップに加えることで商売の幅も広がっていきそうですよね。

ただし、ここで注意が必要です。お酒の販売には、きちんと「免許」が必要です。
この免許を取らずに販売してしまうと、法律違反になってしまいます。

今回は、「酒類販売免許とは何か?」「お店でお酒を売りたい時はどうする?」という基本をご紹介します。そして次回以降、お店で売る場合・ネットで売る場合の違いなどについて、わかりやすく解説していきます。

\ 酒類販売を検討している方、ぜひご相談ください! /

目次

そもそも、なぜ「酒類販売免許」が必要なのか?

酒類は「酒税」がかかる特別な商品

お酒の販売には、実はかなり厳しいルールがあります。
その理由の一つが「酒税」という税金の存在です。酒類には消費税とは別に、国が定める酒税がかかっています。つまり、お酒の販売は国家の税収に直結する特別な取引と位置づけられているんですね。

また、健康や治安の観点からも、「誰でも自由に販売してよい」商品とはされていません。未成年の飲酒防止、流通の適正化、粗悪な酒類の排除といった目的もあり、酒税法などの法律でしっかり管理されているのです。

そのため、無許可でお酒を販売してしまうと「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則もあるので注意が必要です。

酒税法第56条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第九条第一項の規定による販売業免許を受けないで酒類の販売業をした者
(以下省略)

酒税法第9条1項(酒類の販売業免許)
酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。
(以下省略)

「誰に売るのか?」によって必要な免許の種類が変わる

酒類販売免許は、「誰に売るか?」によって必要な種類が異なります。ここは少しややこしいのですが、実務上とても大切なポイントです。

たとえば、お店に来た一般の消費者や、近隣の飲食店(居酒屋・バー・レストランなど)に対して販売する場合は、「一般酒類小売業免許」で対応できます。
つまり、「飲食店に売る=業務用=卸売免許が必要」と誤解されることもありますが、これは間違いです。
飲食店のように「自分のお店で提供する目的で仕入れる先」に販売する場合は、小売業の範囲に含まれるとされています。

一方で、酒類を販売する業者(酒販店や問屋など)に対して販売する場合は、「酒類卸売業免許」が必要になります。このように、販売相手の業態によって免許の区分が変わるという点は、申請前に必ず整理しておきたいところです。

酒類販売免許にはどんな種類があるの?

酒類販売免許は、販売の「相手」や「手段」によって、いくつかの種類に分かれています。
自分のビジネスがどのスタイルに当てはまるかを明確にしておかないと、申請時に誤った免許を選んでしまう恐れもあります。先ほど説明した「小売」と「卸売」の部分から改めてお伝えしていきます。

大きく分けて「小売」と「卸売」

まず大前提として、酒類販売免許は大きく「小売」と「卸売」の2つに分かれます。

  • 小売(Retail):消費者や飲食店など、“最終的に酒類を提供する相手”に対する販売
  • 卸売(Wholesale):他の酒販業者やメーカーなど、“さらに酒類を流通させる業者”への販売

一般的な店舗営業や、飲食店・個人宅への販売を考えている方は、小売免許が中心になります。

「小売免許」はさらに3つに分かれる

そしてこの「小売免許」は、販売の方法や目的に応じて、さらに細かく以下の3つに分類されます。

① 一般酒類小売業免許(店舗販売)

最も基本的な小売免許です。店舗や事務所で対面販売する場合、または近隣の消費者や飲食店に販売する場合に必要です。ネット通販を広域で行いたい場合には、別の免許が必要になるため注意が必要です。

② 通信販売酒類小売業免許(ネット販売・全国対応)

ECサイトやカタログ販売など、2都道府県以上の広い範囲に向けて通信手段で販売する場合に必要です。ネットショップなどを立ち上げて、全国に酒類を発送するにはこちらの免許が必要になります。

特に「通信販売酒類小売業免許」については、販売できる酒類に大きな制限があります!次回、詳しく解説しますので、この点を必ず押さえるようにしましょう!

③ 特殊酒類小売業免許

ちょっと耳慣れない免許かもしれませんが、現状「特殊酒類小売業免許」は、酒類の卸売業者が自社の社員などに限定して、お酒を小売販売できるようにするための免許と言っていいでしょう。

日常的な酒販ビジネスを考えている方にとっては、あまりなじみがないかもしれませんが、一定の条件下では活用されている免許です。

昔は「特殊酒類小売業免許」においていろんな分類があったのですが、法改正に伴い上記条件のための分類となってしまいました。

このように、一口に「酒を売りたい」といっても、どんな手段で、誰に、どこまでの範囲で売るのかによって、適切な免許は異なってきます。次は、最も相談の多い「お店でお酒を売りたい」方向けに、一般酒類小売業免許について詳しく解説していきます。

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店頭でお酒を売るには「一般酒類小売業免許」が必要!

近隣住民や飲食店などへの対面販売が対象

実店舗でお酒を販売したい場合、基本となるのが「一般酒類小売業免許」です。
この免許を取得すれば、近所の一般消費者や飲食店などの営業者に対して、原則すべての種類のお酒を店頭で販売することができます。

「飲食店で提供するために仕入れたい」という飲食店も、この免許の販売対象に含まれるため、小売免許で販売可能です。一方で、酒販店などの「販売を目的とした業者」への販売は「卸売免許」が必要になるため、販売先によって免許の使い分けが必要です。

また、実店舗での販売といっても、店舗の場所や区画、販売設備、販売従事者の配置状況などが審査の対象になります。たとえば、飲食店の一角を利用して販売したい場合などは、「飲食スペース」と「販売スペース」が明確に区分されていることが求められます。

一般酒類小売業免許の要件(4つのポイント)

一般酒類小売業免許を申請する際には、いくつかの条件をクリアする必要があります。これをまとめて「免許の要件」と呼び、大きく4つの観点(人的/場所的/経営基礎的/需給調整)に整理されています。

ここで注意していただきたいのは、要件を満たさない状態で虚偽・不正に免許を受けた場合、該当免許だけでなく保有する他の酒類販売免許まで取消対象になることがあるという点です。さらに取消処分歴が付くと、一定期間(原則3年)新たな免許が受けられなくなるケースもあります。

それでは順番に見ていきましょう。

1.人的要件(申請者・役員等の適格性)

免許を申請する「人」が適正であるかを確認します。個人申請であれば本人、法人であれば役員(代表権者に限らず審査対象)、未成年申請の場合は法定代理人、さらに販売場に支配人を置くときはその支配人もチェックされます。

概ね次のような事項に該当しないことが必要です。

  • 過去に酒類の製造免許・販売業免許、またはアルコール事業法の許可を取り消され、取消日から3年経過していない
  • 取消処分を受けた法人の取消原因発生日前1年以内に業務執行役員だった人で、取消から3年未満。
  • 申請前2年内に国税または地方税の滞納処分を受けている。
  • 国税・地方税関係法令違反で罰金刑または通告処分を受け、執行(又は履行)から3年未満。
  • 未成年者飲酒禁止法、風営適正化法(未成年者酒提供部分)、暴力団員不当行為防止法、刑法の特定罪(傷害・暴行等)、暴力行為等処罰法等で罰金刑を受け、執行終結から3年未満。
  • 禁錮以上の刑の執行終結(又は免除)から3年未満。

一人でも該当すると免許不可になる場合がありますので、役員構成や過去の処分歴は必ず事前確認しましょう。

2.場所的要件(販売場として適切か)

「その場所で本当に酒類販売を行って良いのか?」を確認するのが場所的要件です。賃借物件なら使用目的や契約範囲なども確認されます。

  • 製造場・他の販売場・酒場・料理店等と同一の場所になっていないか。(同じ床面を区切って併設する場合は特に注意が必要です)
  • エリアの区画、専属の販売従事者、代金決済(レジ)の独立性などの確認
  • 狭い飲食店内の棚を「販売場」として申請する等、実態上区分不能なケースは不適となるケースが多いです

飲食店と酒販を併設する場合は、入口・レジ・陳列・在庫管理を分ける等の工夫でクリアできるケースもあります。申請時だけでなく、その後の運用においても大変な面がありますので、本当に両方の事業展開が必要なのかも検討する必要があります。店舗の設計段階で相談いただくと柔軟な対応が可能です。

3.経営基礎的要件(資金・信用・運営能力)

酒類を継続的に仕入・販売できる経営基盤があるかどうかをみる項目です。「破産手続開始決定後で復権していない」等の明確な欠格に加え、経営の薄弱性が審査されます。

下記のような事情があると不利・不可となることがあります。

  1. 国税または地方税の滞納がある。
  2. 申請前1年以内に銀行取引停止(いわゆる手形不渡り等)を受けている。
  3. 直近期決算で、繰越損失が「資本等の額」を上回っている。
    (資本等の額 = 資本金+資本剰余金+利益剰余金 − 繰越利益剰余金)
  4. 過去3事業年度すべてで、各期の欠損額が資本等の額の20%超となっている。
  5. 酒税関係法令違反等で通告処分を受け、履行していない/告発されている。
  6. 建築基準法・都市計画法・農地法等に違反し、店舗の除却・移転命令等が出ている。
  7. 適正な酒類販売管理体制(在庫区分・年齢確認・帳簿整備など)が構築できないと見込まれる。
  8. 酒類小売業を適正に営むに足る知識・経験・記帳能力がないと判断される。
    (酒類関連従事3年以上、他業での経営経験+酒類販売管理研修受講等で補える場合も。)
  9. 必要な資金・施設・設備を既に備えているか、免許付与までに確実に整備できる見込みがあるか。

財務指標がギリギリの場合でも、増資や役員借入金整理、資本性資金投入など改善策で審査に臨むことが可能です。決算資料と合わせて早めにご相談ください。

4.需給調整要件

最後に「需給調整要件」です。条文上は「酒税の保全上、需給の均衡を維持する必要がある場合には免許を付与しない」とされていますが、実務では販売先や事業形態が適正かという観点で確認されます。

  • 構成員に限られた閉じた団体(社内など)向けだけの販売事業ではないこと。
  • 申請者が酒場・旅館・料理店等の接客業者である場合でも、区分管理・販売管理体制が整えば免許取得が可能なケースはありますが、飲用提供分と販売分の帳簿・仕入・在庫を明確に分ける必要があります。

POINT!
「飲食店だけど瓶売りもしたい」ケースでは、飲食店営業許可とは別に、店頭でお酒(ボトル)を持ち帰り販売するなら一般酒類小売業免許が必要です。さらにネット注文で県外発送までやりたいなら、通信販売酒類小売業免許が必要になります。用途別に免許を組み合わせていくイメージで考えましょう。

小売でお酒を売るなら、「人・場所・経営」の観点で準備を

一般酒類小売業免許の取得には、「お酒を売る店舗」がありさえすればOKというわけではありません。
申請の際には、販売場所の使用権原や保管スペースの有無、帳簿管理体制、経営の安定性や過去の違反歴まで、実にさまざまな観点から審査が行われます。

また、同一敷地内に飲食スペースがある場合などは、「飲食店営業と物販との線引きが明確か」も見られます。形式だけ整えたつもりでも、「実態に即した販売体制かどうか」もきちんと示すことができるよう、しっかりと事前の準備をして臨むことが大切です。

当事務所では、こうした要件の整理や申請書類の作成サポート、税務署とのやりとりの代行も承っております。
はじめて酒類を販売する方、どこから手をつければよいか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。

次回は、お酒の通信販売をしたい方向けに「通信販売酒類小売業免許」の申請について解説していきます!お楽しみに!

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