おひとりさまの生前契約 〜安心して暮らすための4つの備え〜
こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。
\ 今回はこちらの記事の続きの内容です/

前回のコラムでは、おひとりさまの終活において「遺言書」がいかに大切かをご紹介しました。しかし、遺言書が効力を持つのはあくまで「死後」の話。実際には、「判断力が落ちたとき」「病院や施設に入るとき」「亡くなった後の手続き」など、生きている間にも備えるべき課題が数多くあります。今回は、そうした不安に対応する「生前契約」について解説。任意後見契約・財産管理契約・見守り契約・死後事務委任契約の4つを中心に、それぞれの役割や注意点、行政書士によるサポート内容について、やさしく解説・整理していきます。
\ 遺言・相続・生前契約でお困りの方はまずはお気軽にご相談ください。/
おひとりさまに生前契約が必要な理由
「遺言書さえ作っておけば大丈夫」と思われがちですが、それだけでは不十分なケースも少なくありません。特におひとりさまの場合、生前からの支援体制が整っていないと、突然の入院や判断力の低下、死後の手続きで周囲に迷惑をかけてしまうことがあります。
遺言書が効力を持つのは、あくまでもご本人が亡くなった後のことです。たとえば「施設への入居契約」「金融機関での手続き」「介護サービスの利用申込」などは、生前の判断力がしっかりしているかどうかが大きく影響します。さらに、亡くなった後も、役所への届出や葬儀の手配、家財の整理など多くの事務作業が残ります。
こうした事態に備えるのが「生前契約」です。本人の意思を元に、信頼できる人や専門家と契約を結ぶことで、将来への不安を軽減することができます。任意後見契約、財産管理契約、見守り契約、死後事務委任契約といった制度を組み合わせることで、おひとりさまの暮らしに必要な「安心の準備」を事前に築くことが可能になります。
4つの代表的な生前契約とその特徴
【1】任意後見契約(判断能力が落ちた後のための契約)
どんな内容で、どんな人に向いているか
任意後見契約とは、将来、認知症などにより判断能力が低下したときに備えて、あらかじめ自分の信頼できる人(家族、友人、専門家など)に、財産管理や生活上の契約行為などを代理してもらうことを約束しておく契約です。この契約は必ず公正証書で作成する必要があり、契約しただけではすぐに効力を持つわけではありません。実際に本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所に申立てがなされたうえで、「任意後見監督人」が選任されて初めて、任意後見人の権限がスタートします。そのため、元気なうちに備える制度であり、意思がはっきりしている時期にこそ必要性を考えておきたい重要な選択肢です。
契約の主な内容・支援範囲
- 財産管理(口座、不動産など)
- 医療・介護サービスの契約
- 施設入所手続きの代理
※実際に効力が発生するのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所により後見監督人が選任されたときです。
行政書士がサポートできる範囲
- 契約内容の整理・助言
- 公正証書作成の事前準備
- 公証役場との連絡調整・書類作成補助
留意点
- 必ず公正証書で作成する必要がある
- すぐには効力を発しない
- 後見監督人が必要になるため、そこでも費用が発生する
【2】財産管理契約(必要なタイミングから、財産管理をしてほしいときの契約)
どんな内容で、どんな人に向いているか
財産管理契約とは、本人の判断能力に問題がない元気なうちから、預貯金の出し入れや公共料金の支払い、不動産の管理などを信頼できる第三者に委任できる契約です。あくまで「委任契約」であり、本人の意思能力が残っている間に限って効力を持つ点が特徴です。たとえば入院や高齢者施設への入所により、日常の財産管理が難しくなった場合のサポートに活用できます。任意後見契約のように裁判所の関与は必要なく、日常的な支援手段として適しています。
契約の主な内容・支援範囲
・通帳や印鑑の管理
・公共料金や医療費、家賃などの支払い
・入院・施設入所時の契約手続きなど
行政書士がサポートできる範囲
- 契約書の文案作成支援
- 信頼できる受任者との契約調整
- 日常的な支援内容の明確化と助言
留意点
- 必ずしも公正証書である必要がない。
- 契約解除や範囲の見直しを定期的に検討する必要がある
- 第三者による不正チェック機能(任意後見契約でいう任意後見監督人など)がない
【3】見守り契約
どんな内容で、どんな人に向いているか
見守り契約は、文字通り「日々の暮らしを見守ってもらう」ことを目的とした契約です。具体的には、定期的な訪問や電話連絡を通じて、安否の確認や生活の変化を把握することが中心です。本人の意思確認や、今後必要な支援をスムーズに行うための「前段階」として機能するケースが多く、任意後見契約や財産管理契約と併せて活用されます。特に、身寄りがない方や遠方に親族がいる方などにとって、孤独や不安を和らげる手段として注目されています。
契約の主な内容・支援範囲
- 定期的な電話や訪問による安否確認
- 緊急時の連絡体制の構築
- 他の生前契約への橋渡しとして活用
行政書士がサポートできる範囲
- 契約書の作成支援
- 連絡体制や支援内容の明文化
- 他の生前契約との連携設計
留意点
- 見守り契約単体では法的拘束力が弱いため、財産管理契約や任意後見と組み合わせて利用されることが多い
- 将来、任意後見人になる方と見守り契約をすれば、定期的なコミュニケーションを経て信頼関係を築くことができる
- 緊急対応には限界があるため体制整備が重要
【4】死後事務委任契約
どんな内容で、どんな人に向いているか
死後事務委任契約は、本人が亡くなった後に発生する様々な手続きを、あらかじめ第三者に依頼しておく契約です。具体的には、葬儀や火葬・納骨、住居の片づけ、行政機関への届け出、各種契約の解約手続きなどが対象です。通常、死亡後の手続きは家族が担うことが前提とされていますが、おひとりさまや家族に頼りたくない方にとって、信頼できる第三者に依頼できるこの契約は重要な備えとなります。契約内容は原則として「準委任契約」(民法第656条)として扱われ、公正証書で作成されることが一般的です。
契約の主な内容・支援範囲
- 葬儀や火葬、納骨の手配
- 住民票抹消、公共料金の解約、家財の整理など
- 医療機関や行政への連絡
行政書士がサポートできる範囲
- 契約内容の整理と文案作成
- 公正証書化の支援(通常の契約書でもいいのですが、より安心できます)
- 提携業者や関係者との調整
留意点
- 遺言とは異なり「死後の事務」に特化した契約
- 金銭面の準備(預託金など)も含め、事前準備が重要
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生前契約をどう活用する?組み合わせの考え方と専門職に依頼するメリット
| 任意後見契約 | 財産管理契約 | 見守り契約 | 死後事務委任契約 | |
|---|---|---|---|---|
| 開始タイミング | 判断能力が低下後、後見監督人が選任されたとき | 契約後すぐに開始可能(判断能力があるうち) | 契約後すぐに開始可能(判断能力があるうち) | 死亡後に開始 |
| 支援内容の例 | 財産管理、施設入所の契約、医療・介護契約の代理 | 通帳・印鑑の管理、入退院手続き、公共料金の支払い | 定期的な電話・訪問による安否確認 | 葬儀・納骨、住民票の抹消、公共料金の解約 |
| 契約形式 | 公正証書による契約+家庭裁判所の監督あり | 書面契約(公正証書であるとより良い) | 書面契約(公正証書であるとより良い) | 書面契約(公正証書で作成するのが一般的) |
| 家族以外との契約 | 可能 | 可能 | 可能 | 可能 |
| 行政書士の関与 | 契約内容整理、書類作成、公証役場との調整 | 契約書文案作成、内容助言、契約調整支援 | 契約書作成支援、内容整理、他契約との連携設計 | 契約内容整理、公正証書支援、関係者との調整 |
| 留意点 | 効力発生に時間がかかる、後見監督人の費用がかかる | 監督機関がない、不正リスクを抑える体制づくりが必要 | 単独では支援に限界、他契約と併用が効果的 | 金銭の準備や信頼できる人選びが重要 |
上記の比較表からもわかるとおり、生前契約はそれぞれが異なる目的や機能を持っており、「どれか一つで十分」というよりは状況に応じて複数を組み合わせることで、より万全な備えが可能になります。
たとえば、見守り契約+財産管理契約+死後事務委任契約という組み合わせは、日常的なサポートから死後の手続きまでを網羅できる構成です。また、判断能力の低下が心配な方は、将来に備えて任意後見契約を事前に結んでおくことで、介護や施設入所時の意思決定がスムーズに行えるようになります。
こうした契約を進める上では、信頼できる専門職との連携が欠かせません。行政書士は、これらの契約書類の作成支援や文案のチェック、公証役場との調整、公正証書作成の手続き補助などを通じて、ご本人の意思を適切に形にするお手伝いができます。また、必要に応じて弁護士・司法書士・税理士などと連携し、法的なトラブルや相続税対策にも対応できる体制を整えることができます。
生前契約は、一見すると複雑に見えるかもしれません。しかし、「どんな支援を、いつ、誰に頼みたいか」を整理しながら進めることで、自分らしい終活のかたちを築くことができます。まずは小さな不安からでも構いません。おひとりで悩まず、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
行政書士ができるサポートとまとめ
生前契約や遺言書の作成には、多くの法的な知識と、個別事情に応じた丁寧な対応が求められます。行政書士は、こうした終活に関する法的な文書作成の専門家として、皆さまの「これから」に寄り添う支援が可能です。
たとえば、以下のようなサポートが行えます。
- 任意後見契約・財産管理契約・死後事務委任契約等の文案作成支援
- 契約内容の整理、公証役場との事前調整、公正証書作成の手続き補助
- 提携士業(司法書士・弁護士・税理士等)との連携による、複合的な支援
- 相続や遺言に関する将来のトラブルを未然に防ぐためのアドバイス
- おひとりおひとりの想いに基づいた、オーダーメイドの支援体制
特におひとりさまの場合、「誰に相談してよいかわからない」「いざというときに頼れる人がいない」といった不安を抱えていらっしゃる方も少なくありません。行政書士は、そうした方々の安心のパートナーとして、法務的にも実務的にもサポートできる立場です。
人生の後半を、より安心して、自分らしく過ごすために。
生前の備えを整える第一歩として、どうぞお気軽にご相談ください。
\ 遺言・相続・生前契約でお困りの方はまずはお気軽にご相談ください。/

