特車申請(特殊車両通行許可申請)はなぜ時間がかかるのか?審査期間の仕組みと遅延の理由

申請したのにまだ許可が下りない



このままだと申請したのに、現場に間に合わないかも…
特車申請(特殊車両通行許可申請)について、そんな声をよく耳にしますが、特車申請は提出からすぐに許可が出るものではありません。国土交通省が示す「標準処理期間」があるとはいえ、実際の現場ではそれより時間のかかるケースが頻発しています。今回のコラムでは、申請にかかる審査の流れと、時間がかかる主な理由を整理しながら、「どうすればスムーズに進められるか」についてもあわせて解説していきます。
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「標準処理期間」とは?まずは制度上のルールを確認
特車申請の処理には、国土交通省が定めた「標準処理期間」があります。この期間は、あくまでも申請内容に不備がなく、一定の条件を満たしている場合に限って適用される目安であり、具体的には以下のようになっています。
- 新規申請・変更申請:おおむね3週間以内
- 更新申請:おおむね2週間以内
この「標準処理期間」は、行政手続法などで定義されている用語で、一般的な感覚とはずれがあります。というのも、「標準処理期間」とは、申請が行政庁に到達してから、その申請に対する許可や不許可などの処分をするまでに、通常必要とされる標準的な期間のことを言い、申請の補正や審査に必要な追加資料の手配、行政庁の休業日などは含まれません。つまり、書類の不備がなく申請が可能になったタイミングからカウントがスタートするのです。
審査期間は「いつから始まるか」が重要
申請書類を提出したその日が、すぐに審査開始日になるわけではありません。必要な書類がすべて揃っており、形式不備がないことが確認されて初めて、審査が本格的に進み始めます。初期のミスや記載漏れがあると、表向きは「受付済み」でも、実際の審査がストップしたままということもあります。
特車申請(特殊車両通行許可申請)において、時間がかかる4つの代表的な原因
標準処理期間が示されていても、実際の審査が長引いてしまうケースは多々あります。ここでは、申請がスムーズに進まない代表的な4つの原因を見ていきましょう。
1. 経路に「未収録道路」が含まれている
特車支援システムで経路を設定する際、通行するすべての道路が「道路情報便覧」に掲載されている必要があります。
ところが、市道・町道などは便覧に未収録であることも多く、これらを通行経路に含めると、管理者との個別協議が必要になります。
そのため、通常よりも審査に時間がかかる原因になります。特に、複数の道路管理者が関与する場合は、各管理者の回答を待つ必要があり、1〜2週間以上、場合によっては数か月の追加期間を要することも珍しくありません。
【豆知識】「道路情報便覧」って何?
これは国が整備している、全国の道路情報(路線番号や管理者など)をまとめたデータベースで、特車支援システムでも利用されています。未収録路線を通る場合は、便覧にない=行政側が事前に把握していないルートとなるため、確認に時間がかかるのです。
2. 車両が「超寸法」「超重量」に該当している
申請車両が以下の寸法・重量基準を超える場合、審査が厳しくなり、通常よりも時間を要します。
- 幅:3.5m超
- 長さ:20.0m超
- 高さ:4.3m超
- 総重量:50t超
このような車両は「特に道路への負担が大きい」と判断され、通行できるかどうかを個別に精査する必要があります。経路にトンネル・橋梁などの構造物が含まれる場合には、構造計算の確認や強度チェックも行われるため、審査期間が長引く傾向にあります。
3. 車両諸元の誤入力
トラクタとトレーラを連結する車両の場合、「車検証に書かれた長さをそのまま足し合わせて全長としてしまう」といった誤入力が多く見られます。しかし実際には、トラクタのカプラ位置やトレーラのキングピン位置、オーバーハングなどを考慮して、連結状態での実測寸法に基づく「正しい全長」を再計算する必要があります。
また、軸距や軸重、輪荷重などの入力ミスも頻出ポイントです。数値の誤りは、道路構造に与える影響を判断する審査の前提を狂わせることになり、確認や差し戻しの対象となってしまいます。
4. 差し戻しによる再確認と審査の停滞
結局のところ、申請書類に不備や誤記があると、差し戻し(補正依頼)が発生します。差し戻された場合は、その時点で審査が停止し、再提出されるまで手続きが進まなくなります。補正後は通常、同一案件としての審査継続となりますが、処理順序が後回しになる、もしくは担当部署が改めて初期から確認し直すことで、結果的にかなりの期間が追加されてしまうこともあります。
また、国土交通省(国道事務所)への申請件数の増加により国道事務所の処理能力を超える混雑状態も起こっています。とくに年末年度末や公共工事の集中時期、それを見越した申請が集中する時期などは、想定よりも大幅に審査が遅れることもあります。
特車申請(特殊車両通行許可申請)を早く通すために今できること
ここまでご紹介したように、特車申請にはさまざまな審査遅延の要因があります。では、できるだけスムーズに、そして確実に許可を得るためにはどのような工夫ができるのでしょうか。以下に、現場でも取り入れやすい対策を整理してみました。
入力内容のダブルチェック体制を整える
極めて一般的な意見に聞こえるかもしれませんが、申請前に、車両寸法・軸重・経路設定などの入力内容を二重チェックする仕組みを設けることも有効です。とくに、トレーラ連結車の全長などは差し戻しの主要因となるため、諸元表や外観図と照らし合わせながらの確認が欠かせません。
外部専門家(行政書士など)との連携も選択肢に
申請のたびに「誰がやるのか」「何を入力すべきか」と悩む体制であれば、制度に精通した行政書士に一部業務を委託することも合理的な選択肢です。
- 書類の正確性確保
- 最新制度への対応
- 時間的な余裕の確保
- 差し戻しリスクの低減
といった面で効果があり、結果として申請の再現性と業務効率が高まるメリットがあります。
また、行政書士に継続的に依頼をすることで、行政書士の方から



そろそろ更新申請のタイミングじゃないですか?経路の追加などがある場合は早めに対応する必要があるので、早めに申請進めていきましょう!
のような形で業務を円滑に進めるためのリマインド・業務管理まで行うこともできますよ!
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特車申請をスムーズに進めるカギは「制度理解」と「準備の精度」
特車申請は、道路の安全性や構造保全を前提とした行政への審査手続きです。そのため、行政庁の都合により審査の時間が多くかかったり、こちらが想定していない形で審査が伸びたりすることもありうるものです。
特に、未収録道路や超寸法車両の審査、そして申請内容の誤記や差し戻しなどが重なると、標準処理期間を大きく超えて数週間〜数か月かかることもあるのが実務の実態です。
だからこそ大切なのは、
- よく使う経路や車両は事前に申請しておく
- 入力ミスを未然に防ぐチェック体制をつくる
- 社内にノウハウが不足している場合は、専門家の協力を得る
といった先回りの準備が大切です。今回のコラムをきっかけに、自社の申請体制や申請の質を見直し、「遅れない特車申請」を実現するヒントとしていただければ幸いです。
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