特車申請をめぐる動向と申請漏れのリスク

特車申請(特殊車両通行許可申請)をめぐる動向と申請漏れのリスク

最近、ゼネコンや元請企業から「特殊車両通行許可証」について確認される機会が増えたと感じていませんか?以前は「慣例的に走っていた道だから」「長年やっているから大丈夫」とされていたようなケースでも、いまや許可証の有無が現場入場の条件になりつつあります。

とはいえ、申請の準備には手間も時間もかかるため、急に対応しようとしても間に合うものではありません。本コラムでは、なぜ特車申請の厳格化が進んでいるのかという背景から、許可証がないことで起こるリスクなどについて改めて整理してみたいと思います。

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目次

「特車申請の証拠」を提出するケースが増えている

これまで特車申請(特殊車両通行許可申請)は、「違反しなければ良い」「通れれば問題ない」といった認識で運用される場面も少なくありませんでした。法令遵守の観点からはよろしくないことではありますが、慣行上このような状態だったことも事実としてあります。しかし近年では、実際に申請して許可証を取得しているかどうかを荷主や元請が書類で確認するケースが増えています。

特に、公共工事や大型民間工事の現場においては、通行経路や許可番号の確認が必須になっていることも珍しくなくなってきました。元請企業にとっては、関係業者が無許可運行を行っていた場合、自社が道路管理者や監督官庁からの監査・指導を受けるおそれがあるため、通行の合法性を確認・証明しておく必要性が高まっているのです。

また、提出が求められるタイミングも早まってきています。多くの場合は現場に車両が入る際に確認をする、というケースが多いと思いますが、事前に入場登録の手続きを済ませておくことが前提条件(特車の申請をしているという証拠を提出)という現場も少しずつ増えてきているようです。

なぜ今こんなに厳しくなっているのか?

特車申請に対するチェックが厳格化されてきた背景には、行政・発注者側におけるコンプライアンス意識の高まりがあります。

たとえば国土交通省では、無許可通行の摘発や監視体制を強化しており、自治体や道路管理者に対しても指導が進められています。こうした動きは、公共事業を請け負う元請企業にも波及し、関係する協力会社の通行状況や許可取得状況を「きちんと書類で確認する」ことが求められるようになっています。

特車申請(特殊車両通行許可申請)における本来の目的は「道路の保全」「安全な道路通行の確保」にあります。近年、ドライバー不足に伴い、無理な輸送計画・過積載などが問題になっています。また、大型車両による高効率な輸送にも注目されており、ますます特車申請の必要な車両・通行が増えてくることが予想されています。

加えて、事故や違反が発生した際、無許可運行だったことが判明すれば、企業としての責任追及や取引停止に発展する可能性もあるため、元請や荷主としてはリスク管理の一環として、事前に通行の合法性を証明させる体制を強化しているのです。

特車申請(特殊車両通行許可申請)がきちんとできていないと…

たとえば現場では、特車申請の証拠書類を出せず、現場入場できなかったという事例もあり、結果として荷下ろしや作業スケジュールに遅れが生じてしまうことがあります。こうした事態は、荷主や元請からの信頼にも関わる重大な問題です。

また、申請を忘れて無許可で運行してしまった場合は、道路法違反となり、道路法第104条に基づく罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される可能性もあります。

道路法104条
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

さらに、万が一事故が発生した場合、無許可での通行が原因の一因と判断されると、保険金が支払われない、あるいは過失割合が不利になるといったケースも。また、高速道路の「大口・多頻度割引制度」などを活用している場合、無許可運行が判明すると割引適用の停止や解除の対象となる可能性もあります。

このように、「少しの遅れ」「一時的な申請漏れ」だとしても、実際には金銭的・信用的な損失につながるリスクが複数存在することを理解しておく必要があります。

許可申請は「ギリギリ対応」では間に合わない

特車申請(特殊車両通行許可申請)は、申請してすぐに許可が下りるものではありません。申請から許可が下りるまでには、一定の期間が必要です。

国土交通省が示す「標準処理期間」は、申請内容が標準的な条件を満たしている場合、新規・変更申請でおおむね3週間更新申請でおおむね2週間とされています。

ただし、これはあくまで「標準的な条件を満たしている場合」の目安です。

審査期間が延びる要因

以下のような場合、審査期間が延びる可能性があります。

  • 申請経路に未収録道路が含まれている場合:道路情報便覧に記載されていない道路が含まれると、他の道路管理者との協議が必要となり、審査期間が延びることがあります。
  • 申請車両が超寸法車両または超重量車両である場合:特に、幅3.5メートル、長さ20.0メートル、高さ4.3メートル、または総重量50トンを超える車両は、原則SBIのとなり、追加の審査や書類が必要となるため、審査期間が延びる可能性があります。
  • 申請内容に不備や変更がある場合:申請後に内容の変更があると、再審査が必要となり、審査期間が延びることがあります。

これらの要因(主に個別審査・未収録関係)により、審査期間が1か月以上かかることも珍しくありません

特車申請は、余裕を持って早めに行うことが重要です。特に、初めての申請や複雑な経路を含む場合は、手続きに手間取ってしまい、さらに時間がかかる可能性があります。

特車申請の審査期間や、申請をスムーズに進めるためのポイントについては、今後のコラムで詳しく解説する予定です。ぜひご期待ください。

特車申請(特殊車両通行許可申請)は、「事前の準備」と「備え」がすべて

かつては黙認されていたような状況も、今では通用しなくなりつつあります。「特車申請の準備が不十分で現場に入れない」「申請していなかったことで信頼を失った」そんな声が少しずつ増えているようです。

だからこそ、重要なのは「事前に備えておくこと」。
申請には一定の時間がかかりますし、内容に不備があれば差し戻しになる可能性もあります。ギリギリになってから対応するのではなく、よく使用する車両や経路については、あらかじめ早めに対応しておくといった対策が現実的です。

また、「社内で対応するのが難しい」「申請の質を確保したい」といった場合には、行政書士などの専門家と連携して、申請業務の一部を外部化するという選択肢も有効です。

特車申請は、ただの書類作業ではなく、運輸業の皆様の信頼を守る「経営インフラの一つ」とも言えるかもしれません。現場でのトラブルや信頼の失墜を防ぐためにも、ぜひこの機会に、申請体制の見直しや準備の方法を検討してみてはいかがでしょうか。

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