「特車申請(特殊車両通行許可申請)とは何か?」を法的に見直してみましょう
こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。
特車申請(特殊車両通行許可申請)は法律に基づいた制度であり、道路の構造保全と交通の安全を守るために定められた重要な行政手続きです。軽視してしまうと、思わぬ違反や取引停止など、事業に大きな影響を及ぼすおそれもあります。初回は「そもそも特車申請とは何か?」という点から、制度の目的とリスクについて確認していきましょう。
そもそも特車申請とは何だろう?
特車申請とは、車両制限令で定められた基準(寸法や重量)を超える大型車両が一般道路や高速道路を通行する際に、事前に道路管理者の「通行許可」を受けるための制度です。対象となるのは、いわゆる「特殊車両」と呼ばれる車両で、特に建設資材や重機、大型機器などを積載して走行するトラックやトレーラが該当します。
この制度は、単に「申請すれば通れる」というものではなく、道路の構造を傷つけないか、他の交通に支障が出ないかなど、多方面からの検討が行われます。許可を得ずに通行した場合には法令違反となり、罰則が科されるほか、事故発生時には損害賠償責任の追及や保険金の不支給など、事業継続に関わる重大なトラブルに発展しかねません。
特車申請の法的根拠と位置づけ
特車申請は、以下の法令を根拠として運用されています。
ちょっと長くて難しいですよね。笑
この条文をざっくりと解説すると、道路の保全と交通安全の観点から、車両の通行制限が法律上認められているということが分かります。また、その詳細については「政令」に委任されており、「政令」を確認するとどんな基準で制限されているのかが分かります。
またまた長くなってしまいました。笑
この政令では、車両の寸法や重量について「一般的制限値(例:幅2.5m、高さ3.8m、総重量20tなど)」を定めており、これを1つでも超える場合には、通行に際して許可を取得しなければなりません。
これらの法令により、「特殊な車両が勝手に通行すること」は法的に禁じられており、事前の手続きによって初めて合法的な通行が可能となるのです。
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車両制限令とは?対象車両の基準と許容限度
特車申請が必要かどうかを判断するうえで、最も重要な基準となるのが「車両制限令」です。
これは、道路法第47条の委任に基づき、車両の大きさや重さに上限を設けた政令です。一般道や高速道路など、公道を走行する車両が守るべき「ルールの土台」ともいえます。
先ほど引用をしましたが、改めてここでは、その「一般的制限値」と呼ばれる基本基準を整理してご紹介します。
一般的制限値とは?まず押さえるべき8つの数値
下記の8項目のうち、ひとつでも上限を超える場合には「特殊車両」となり、原則として通行には許可が必要です。
- 幅:2.5メートル
- 長さ:12.0メートル
- 高さ:3.8メートル(※高さ指定道路では4.1メートル)
- 最小回転半径:12.0メートル
- 総重量:20.0トン(※高速自動車国道及び重さ指定道路では最大25.0トン)
- 軸重:10.0トン
- 隣接軸重:最大20.0トン(軸距により18.0〜20.0トンに区分)
- 輪荷重:5.0トン
それぞれ図示をしますので確認してみましょう。

一部道路では「長さ」や「重量」に特例がある
先ほどご紹介した「一般的制限値」は基本となる上限ですが、実際の運用においては道路の種類や車両の構造によって、一部の数値に例外的な上限(特例)が認められています。
長さの特例(車両制限令 第3条第3項)
特に高速自動車国道(高速道路)を通行する場合には、以下のような長さ制限が適用されます。
| 車両タイプ | 長さの上限 |
|---|---|
| セミトレーラ連結車 | 16.5m |
| フルトレーラ連結車 | 18.0m |
※ただし、積載貨物が被けん引車の車体前後にはみ出していない場合に限ります。
この特例を超える車両で走行するには、やはり特車申請が必要です。
総重量の特例(通行許可省令 第2条)
また、以下のように車両の「最遠軸距(前後軸の長さ)」に応じて、総重量の制限値も緩和されます。対象となるのは、特例5車種(ポールトレーラ・低床セミトレーラ等)などの一部構造の車両です。
【高速自動車国道を通行する場合の総重量の最高限度】
| 最遠軸距の長さ | 総重量の上限 |
|---|---|
| 8m以上9m未満 | 25t |
| 9m以上10m未満 | 26t |
| 10m以上11m未満 | 27t |
| 11m以上12m未満 | 29t |
| 12m以上13m未満 | 30t |
| 13m以上14m未満 | 32t |
| 14m以上15m未満 | 33t |
| 15m以上15.5m未満 | 35t |
| 15.5m以上 | 36t |
※重さ指定道路や一般道路にも異なる上限が設定されています(例:一般道路では最大27tまで)。
このように、「同じ車両」でも走行する道路や軸距によって制限値が変動するため、実際の申請時には細かな条件確認が欠かせません。
「特例5車種」と「追加3車種」:特車制度の中核をなす8つのトレーラ
特車申請制度において、構造的に「特別な扱い」を受けている代表格が「特例5車種」と「追加3車種」です。これらは一般的制限値を一部超える構造をしているものの、所定の設計条件を満たせば、国土交通省が示す「特例限度値」に基づき、比較的広い範囲の道路で特車申請に基づく通行が認められやすくなっています。
これら8車種を総称して「特例8車種」とも呼ばれます。
特例5車種(セミトレーラ)
以下は、車両の形状・用途が明確に定められており、設計要件を満たすことで通行限度値の緩和が認められる代表的な構造です。
| 車種名 | 主な用途・特徴 |
|---|---|
| ①バン型セミトレーラ | 一般貨物を運搬する密閉構造の車両。 |
| ②タンク型セミトレーラ | 液体や粉体を運搬する円筒状のタンク構造を持つ車両。 |
| ③幌枠型セミトレーラ | 側面に幌を備え、骨組みで構成された開放型。 |
| ④コンテナ用セミトレーラ | コンテナ運送に用いるもの。※海上コンテナ用セミトレーラーとは区別されます |
| ⑤自動車運搬用セミトレーラ | 自動車(乗用車等)を積載するために2段式構造を持つ専用車両。リアのオーバーハングの特例あり。 |
※これらの車両には、長さ・重量に関する特例が適用される場合があります

追加3車種(セミトレーラ)
以下については、貨物の落下を防止するために十分な強度のあおり等や固縛装置を有していなければいけません。
| 車種名 | 主な用途・特徴 |
|---|---|
| ⑥あおり型セミトレーラ | 側面にあおり板を備え、資材や建材などの落下防止に配慮した構造。 |
| ⑦スタンション型セミトレーラ | 金属棒(スタンション)で立体物や長尺物の荷崩れを防止する構造。 |
| ⑧船底型セミトレーラ | 荷台中央が凹型で鋼材などが転がりにくく設計された構造。 |

無許可通行のリスクと罰則
現実に起こる「違反と責任」
特車申請をせずに、制限値を超える車両で公道を走行した場合、これは明確な法令違反となります。たとえ通行時にトラブルがなかったとしても、「申請をしていない」という事実だけで違法行為に該当し、事業者は罰則の対象となります。
申請漏れや未確認での運行であっても、違反は違反です。刑事罰の対象となるだけでなく、企業としての信用を著しく損なうおそれがあります。
高速道路大口多頻度割引の停止
特車申請の未実施や違反が発覚すると、NEXCO等が提供する「大口・多頻度割引制度」の対象から外される可能性があります。この制度は、月間の高速道路利用額や通行回数が一定基準を超える事業者に対し、最大約30%程度の割引が適用されるもので、多くの運送会社が導入しています。つまり、違反の状況次第で、毎月数十万円~数百万円に及ぶ割引が失われる可能性があるのです。とりわけ、長距離運行や高速道路の頻繁な利用がある運送会社にとっては、この制度の適用停止は利益率に直結する重大な損失となりかねません。
信用が失墜、そして取引先からの契約解除
荷主や元請事業者は、法令を順守し、リスク管理を徹底している運送会社をパートナーとして選びます。特車申請を怠ったことで行政処分などを受ければ、その情報はすぐに伝わってしまうでしょう。結果として「契約打ち切り」「再委託不可」などといった、目に見えるかたちでの信頼喪失に直結します。法令違反によって、これまで築き上げてきた信用を一瞬で失うことも十分にあり得ます。
細やかなチェックと確かな申請が重要
さまざまな法令上の制限があるため「とても自分たちでは難しい」「自社内でやると時間がかかる」と思われる際は、ぜひ弊所までご依頼ください。福岡県はもちろん、熊本県、大分県など九州各地、全国でも特車申請(特殊車両通行許可申請)のご依頼を受付中です!安心して事業を継続していくために、ぜひお気軽にご相談いただければと思います!
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