こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。前回のコラムでは、遺言書の意義や作成のタイミングについてお話ししました。今回は、遺言書の種類とその特徴について詳しくお話ししていきます。遺言書にはいくつかの方式があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。ご自身の状況や考え方に沿った、最適な方式を選ぶための参考になれば幸いです。

\ 遺言・相続でお困りの方はまずはお気軽にご相談ください。/
遺言書の三つの方式とは?
日本の民法では、遺言書の方式として以下の三つが定められています。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
まずは①自筆証書遺言から順番にお話ししていきます!
1.自筆証書遺言の特徴と注意点
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文(遺産目録を除く)、遺言書の作成日付および遺言者氏名を自書し押印する方式です。自筆証書遺言は、紙と筆記具があれば自宅で作成でき、公証人の関与も不要なため、比較的費用を抑えることができます。また、内容を自由に記載できる点をメリットに感じる方もいらっしゃいます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・手軽に作成でき、費用がかからない。 ・自分の意思を自由に記載できる。 | ・形式不備により無効となるリスクがある。 ・紛失や改ざんの恐れがある。 ・相続開始後、家庭裁判所での検認手続きが必要。 |
このように、自筆証書遺言は比較的手軽に作成できますが、形式面での注意が必要です。
形式要件と不備による無効のリスク
- 全文の自書:遺言者が遺言書の全文を自書しなければなりません。パソコンや他人による代筆は無効となります。
- 日付の自書:作成した日付を自書する必要があります。「令和5年5月10日」のように、年月日を明確に記載してください。「○月吉日」などの曖昧な表現は無効とされます。
- 氏名の自書:遺言者の氏名を自書します。通称や雅号でも、遺言者を特定できれば有効とされる場合があります。
- 押印:遺言書に印を押す必要があります。認印でも構いませんが、実印が望ましいとされています。
これらの要件を満たさない場合、遺言書は無効となる可能性があります。特に、日付の記載がない、氏名が不明瞭、押印がないなどの不備には注意が必要です。
想定される失敗例
- 日付の記載が曖昧(例:「○月吉日」など)
- 氏名の記入漏れや押印忘れ
- パソコンで作成された文書(※財産目録などの例外を除いて、自書が必要)
- 他人による代筆
2020年開始の法務局保管制度とは?
自筆証書遺言は、手軽に作成できる反面、紛失や偽造、改ざんのリスクがあることが課題とされてきました。これらのリスクを軽減し、遺言者の意思を確実に実現するため、2020年7月10日から「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(以下、遺言書保管法)が施行されました。この制度により、自筆証書遺言を法務局で安全に保管することが可能となりました。
制度の概要と申請方法
申請手続きは、遺言者本人が、以下のいずれかを管轄する法務局に出向いて行う必要があります。
- 遺言者の住所地
- 遺言者の本籍地
- 遺言者が所有する不動産の所在地
申請時には、以下の書類等が必要となります。
- 自筆証書遺言書(ホチキス留めも封もしていないもの)
- 保管申請書
- 本人確認書類(顔写真付きの官公署発行のもの)
- 住民票の写し(本籍・筆頭者の記載があるもので、マイナンバー・住民票コードの記載のないもの)
- 手数料(3,900円分の収入印紙)
申請の際には、現状、事前に予約を行うことが必須とされています。予約方法や申請書の様式については、法務省の公式ウェブサイトをご参照ください。
\自筆証書遺言の作成についてもご相談受付中です/
保管制度を使ったときの検認不要というメリット
従来、自筆証書遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所での検認手続きが必要でした。しかし、遺言書保管制度を利用して法務局に保管された遺言書については、検認手続きが不要となります。これは、遺言書保管法第11条において、民法第1004条第1項の規定が適用されないと定められているためです。これにより、相続人は、遺言者の死亡後、速やかに遺言書の内容を確認し、相続手続きを進めることが可能となります。
形式面のチェックと実務上の安心感
遺言書保管制度では、法務局の職員(遺言書保管官)が、遺言書の外形的な要件を確認します。具体的には、遺言書が自筆であること、日付や氏名が自書されていること、押印があることなどが確認されます。これにより、基本的な外形的不備による遺言書の無効リスクを軽減することができます。
ただし、遺言書保管官は、遺言書の内容についての確認やアドバイスを行うことがないうえ、有効性を保証しているものではありません。そのため、遺言書の内容に不安がある場合は、事前に専門家に相談することが望ましいです。
公正証書遺言の特徴とおすすめポイント
公正証書遺言とは、公証役場で公証人が遺言者の意思を聞き取り、それを文章にまとめ、正当な手続きで作成・保管する遺言書の方式です。民法で認められている三つの方式の中でも、最も安全性が高く、実務上も非常に多く活用されているのがこの「公正証書遺言」です。
公正証書遺言の手続きの流れ
遺言者はまず、遺言の内容について準備し、公証役場に予約を取って面談を行います。遺言の内容は公証人が口述を受けて文書化し、遺言者および証人2名がその内容を確認して署名・押印を行います。作成された遺言書の原本は、公証役場にて厳重に保管され、遺言者本人には「正本」と「謄本」が渡されます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・形式不備のリスクが原則ない ・紛失・改ざんの心配がない ・家庭裁判所の「検認」が不要 ・高齢者の方でも比較的安心して作成できる | ・他の方式に比べて費用が多くかかる ・証人2名が必要 |
メリット1:形式不備のリスクが原則ない
公正証書遺言は、公証人が法的要件に基づいて作成を主導するため、自筆証書遺言のような形式不備による無効リスクがほぼゼロです。実務上でも、無効になる可能性が最も低い方式として広く認識されています。
メリット2:紛失・改ざんの心配がない
作成された原本は、全国の公証役場で保管されるため、万が一、正本や謄本を失っても再発行が可能です。また、改ざんの心配もありません。これは、遺言書の真正性が後の相続手続きにおいて極めて重要になることを考えると、非常に大きなメリットです。
メリット3:家庭裁判所の「検認」が不要
通常の自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言は家庭裁判所での検認手続きが不要です。これにより、相続開始後、速やかに相続手続きを進めることが可能となります。
メリット4:高齢者の方でも比較的安心して作成できる
公証人は、遺言者の意思能力についても確認を行い、遺言の内容を把握できているかを慎重に判断します。したがって、公正証書遺言にて作成することで、後に遺言の有効性が争われにくくなるという点でも、安心できる方式です。
デメリット1:他の方式に比べて費用が多くかかる
公正証書遺言の作成には、公証人手数料がかかります。手数料は遺言に記載される財産額などさまざまな要件に応じて異なり、一般的には数万円〜十数万円の範囲内となります。証人を依頼する場合には、別途謝礼も必要です。この金額はあくまでも公証役場や証人などに支払うものなので、専門家のサポートを必要とする場合はさらに費用がかかってしまいます。
デメリット2:証人2名が必要
作成時には、2名の証人の立ち会いが必要となります。相続人やその配偶者、未成年者などは証人になれないため、親族などに依頼することが難しいケースも多くあるので注意が必要です。そのような場合には、行政書士や専門家に証人手配を依頼することができます。
このように、公正証書遺言は、多少の手間と費用がかかるものの、もっとも確実で、遺言のトラブルを未然に防ぎやすい方式です。とくに、財産が一定以上ある方、ご家族との関係に複雑な事情がある方、判断能力が今後低下するのを危惧されているご高齢の方などにとって、最有力の選択肢といえるでしょう。
\ 公正証書遺言の手続き、大変ですよね。ご相談受付中です!/
秘密証書遺言は使える?あまり選ばれない理由
秘密証書遺言の内容とその作成手順
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在のみを公証人と証人に証明してもらう方式の遺言です。遺言書の内容は遺言者以外には知られず、遺言者が亡くなるまで秘密が保たれます。
秘密証書遺言を作成するには、以下の手順を踏む必要があります。
- 遺言者が遺言書を作成し、署名・押印する。(自筆でもPC作成でもOKです)
- 遺言書を封筒に入れ、封印する。
- 公証人1人および証人2人以上の前で、封書を提出し、自己の遺言書である旨と筆者の氏名・住所を申述する。
- 公証人が、提出日付および遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者および証人とともに署名・押印する。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・内容の秘密保持 ・自筆が不要 ・公証人手数料が比較的安価 | ・手続きの煩雑さ ・遺言書が発見されないリスク ・内容の不備による無効リスク ・家庭裁判所での検認が必要 |
秘密証書遺言のメリット
- 内容の秘密保持:遺言の内容を他人に知られずに済むため、プライバシーを重視する方に適しています。
- 自筆不要:遺言書の本文はパソコンで作成したものや代筆でも可能であり、遺言者の署名と押印があれば原則有効です。
- 公証人手数料が比較的安価:公正証書遺言に比べて、公証人に支払う手数料が安くなる傾向があります。
秘密証書遺言のデメリット
- 手続きの煩雑さ:公証人役場での手続きや証人2人の同席が必要であり、自筆証書遺言に比べて手間がかかります。
- 発見されないリスク:あくまでも公証役場は存在を証明するだけなので、遺言書が遺言者の死後に発見されない可能性があり、遺言の内容が実現されない恐れがあります。
- 内容の不備による無効リスク:公証人は遺言書の内容を確認しないため、法的要件を満たしていない場合でも指摘されず、結果として遺言が無効となる可能性があります。
- 家庭裁判所での検認が必要:秘密証書遺言は、遺言者の死後に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
これらの理由から、秘密証書遺言は実務上あまり利用されていません。特に、遺言の内容を確実に実現したい場合や、手続きの簡便さを求める場合には、公正証書遺言や自筆証書遺言(法務局保管制度の利用を含む)の方が適しているといえるでしょう。
迷ったときはどうする?専門家に相談するという選択
ここまで、遺言書の三つの方式「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説してきました。どの方式が適しているかは、財産の規模、ご家族との関係、遺言に対する手間暇の量をどれだけ許容できるか、などの程度によって変わってきます。
たとえば以下の通りです。
- 「とりあえず形にしたい」という方には自筆証書遺言(+法務局保管)
- 「争いを絶対に避けたい」「無効になることが不安」という方には公正証書遺言
それぞれの方式がありますが、私個人としては「公正証書遺言」が多くの場合おすすめの方法となります。ただ、自筆証書遺言の方が良いと思われる方ももちろんいらっしゃいますので、それぞれのご希望に合わせてご案内していきます。
しかし、こうした選択肢の中から「自分に合ったもの」を選び、なおかつ法的に有効な形で作成し、将来の相続人にとっても「わかりやすく」「トラブルにならない」形に整えるのは、簡単なことではありません。そこで活用していただきたいのが、行政書士などの専門家のサポートです。
行政書士に相談・依頼するメリットとは?
行政書士は、相続や遺言書に関する専門家の一人です。ごとう行政書士事務所でもご相談をいただければ、次のような形でサポートいたします
- 遺言書として適切な正確な文言と形式の確認・作成
- 公正証書遺言を作成する際の公証人との事前調整や手続きの代行
- 証人が必要な場合の手配・立会いの調整
- 法務局保管制度の活用に向けた書類準備と段取り
- 将来相続人が困らないように、トラブル回避の視点での文案設計
また、ご本人が気づいていないようなリスク(遺留分侵害・財産の特定漏れ・執行困難な内容)などについても事前にアドバイスすることができ、単なる「書き方のアドバイス」以上の安心感を得ることができます。
※こちらの詳細は、また別途コラムにもできればと思っていますが、細かい内容でもあるのでぜひご相談ください!
当事務所では、ご相談の段階から「どの方式が最適か」「公正証書とするならどう段取りするか」といった流れを丁寧にご案内しています。「まだ迷っている」「遺言はまだ早いかな」とお感じの方でも大丈夫です。不安な気持ちがあるうちに、どうぞお気軽にご相談ください。
\ 遺言・相続でお困りの方はまずはお気軽にご相談ください。/

