【第7回】小規模事業者持続化補助金、不採択にならないために知っておきたいこと

小規模事業者持続化補助金、不採択にならないために知っておきたいこと〜よくある勘違いと申請書のNG例〜

目次

採択されない申請書には「理由」がある

こんにちは!ごとう行政書士事務所の後藤です。

小規模事業者持続化補助金は、創業間もない事業者から長年地域で事業を続けてきた方まで、幅広い業種・地域で活用されている補助金です。採択されれば、特例を活用すると最大で250万円、通常であっても50万円の補助金が受けられ、販路開拓や設備投資などの強力な後押しとなります。

しかし、自社で申請をしたという方から寄せられるお声として、「申請したが通らなかった」「理由がわからないまま不採択だった」というのもよくあります。「必要書類を一通り出したのに…」と悔しい思いをされた方も少なくないでしょう。

採択・不採択を分ける大きな要因は、書類の“中身”にあります。つまり、単に書類を整えるだけでなく、「どのように伝えるか」「制度の意図と合致しているか」といった視点が不可欠なのです。この補助金がなぜ生まれ、どのような効果を国・自治体は求めているのか?をしっかり踏まえて、その意図に沿った書類を作成することが重要です。

このコラムでは、過去の申請事例や実務でよく見かける失敗パターンをもとに、「これをすると通らないかも」というポイントを段階的に紹介していきます。少しでも不採択のリスクを下げたいとお考えの方にとって、申請前のセルフチェックに役立てていただければ幸いです。

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NG例①:「なんとなく立派に見えるけど、目的がぼやけている」

採択されない申請書の中で、最も多く見られるのがこのパターンです。見た目にはしっかりと書かれていても、「結局何がしたいのか」「誰に向けた取り組みなのか」がわかりづらい申請書は、審査で評価されにくくなります。

特に、「当社は◯◯業界で10年以上の実績があり〜」「これまでに多くの賞を受賞し〜」といった経営のアピールに多くの文字数を割きながら、他社との違いや市場の変化など、客観的な目線が少なくなるケースが多くあります。

また、よくあるケースとしては、以下のような表現が挙げられます:

  • 「より多くの人に知ってもらうために…」
  • 「認知度向上を図るため…」
  • 「ブランディングを強化する目的で…」

一見、問題がなさそうに見えますが、これだけでは審査側は「誰に?何を?どのように?」という具体像がつかめず、説得力に欠ける印象になります。この表現自体が悪いというわけではありません。その後でもっと具体的な落とし込みが必要、というのがポイントとなります。

補助金申請においては、抽象的な表現は避け、「新たな客層へのアプローチ(例:30代女性向けECサイト)」「◯◯市内の事業者向けサービスの拡販」など、“販路開拓の相手”と“手段”を明示的に記述することが大切です。

申請書の中で立派な文章を書こうとするあまり、かえって目的がぼやけてしまうことはよくあります。読み手が「この会社は、何に困っていて、どんな戦略で販路を開こうとしているのか」がスッと理解できるように意識することが、採択への第一歩です。

NG例②:「経費に無理がある・説明が足りない」

補助金の申請書では、取り組みの内容だけでなく、それにかかる「経費の内訳」も重要な審査ポイントになります。採択されない申請には、経費計上の段階でミスや誤解が見られるケースが少なくありません。

たとえば、以下のような例が挙げられます:

  • 見積額が相場から大きく乖離している(高すぎる安すぎる
  • 経費項目が広すぎて、個別の内容が不明確
  • 経費の説明が乏しく、申請内容との整合性が見えない

補助金制度では、「経費の妥当性」と「販路開拓との関係性」が明示されていなければ、支出の正当性が認められません。 たとえば「広告宣伝費」としてチラシ制作費を計上する場合でも、「何部印刷するのか」「どのエリアに配布するのか」「誰に届けたいのか」など、具体的な根拠を添えることが求められます。

また、ウェブサイト関連費など一部の経費には補助額の上限や構成比率の制限もあるため、それを超えて申請してしまうと制度上の要件を満たさず、不採択となってしまうことも。経費全体のバランスを見ながら、制度の枠内に収まるような設計が重要です。

特に注意したいのは、「言い訳的な説明」「少しこじつけに見える説明」ではなく、「合理的な計画として経費の使い道を説明すること。審査員は「この金額は適正か」「この支出は本当に販路拡大に役立つのか」を見るため、無理のある積算や、理由の乏しい経費計上は評価を下げる要因になります。

NG例③:「やりたいことだけが先行していて、事業の必然性が見えない」

申請書を拝見していると、「やりたいことは伝わるけれど、なぜ今それを行うのかが見えてこない」というケースが少なくありません。
販路開拓の手段としては魅力的でも、その背景にある課題や目的が不明確であれば、審査上は「一過性の思いつき」「自己満足の施策」と受け取られてしまうリスクがあります。

たとえば、

  • 「おしゃれな店舗に改装してイメージアップしたい」
  • 「ブランドの認知度を高めたいのでロゴを刷新したい」
  • 「業務の効率化のために新しい設備を導入したい」
  • 「新商品を導入して、新市場にチャレンジしたい」

といった計画は、一見すると前向きで良さそうに見えますが、それが補助金の対象となるかは別問題です。補助金の審査では、経営上の課題とその解決策が明確に結びついているかどうかが問われます。

「経営上の課題とその解決策が明確に結びついているかどうか」については、「経営計画」と「補助事業計画」の関連性が最も大切!以前にその内容についてまとめた記事を公開していますので、ぜひ参考にしてみてください!

つまり、「なぜその投資をする必要があるのか?」「その取り組みが、どう売上向上や販路拡大につながるのか?」という因果関係を説明する必要があるということです。

この点が不十分だと、「やりたいことだけを並べている」「補助金を使いたいだけの申請」と判断されてしまうこともあります。補助金はあくまで「経営課題の解決を支援する制度」であるため、事業の流れや背景、今後の展開まで含めてストーリーを作ることが、採択への鍵になります。

NG例④:「文章が雑/見やすくする工夫をしていない」

もう一つ見逃せないのが、「文章の伝え方」に関するミスです。申請書の内容自体は魅力的でも、「構成がバラバラ」「読みづらい」「どこに何が書いてあるか分からない」といった理由で、評価を落としてしまうケースは少なくありません。

よくある失敗パターンとしては、

  • 長文ばかりで、話の要点が埋もれてしまっている
  • 逆にすべてが箇条書きで、論理や背景がまったく伝わってこない
  • 見出しがなかったり、改行が少なすぎたりして読みにくい

といった「読み手目線の欠如」が挙げられます。

補助金の審査は、限られた時間の中で多くの申請書をチェックしています。審査員の方は、何十、何百もの申請書を短い期間で確認し、評価をしているのです。だからこそ、「審査する人にストレスなく、伝えたいことが届く書き方」が重要なのです。

具体的には、以下のような工夫を心がけましょう:

  • 背景や目的などのストーリー部分は、文章で丁寧に記述する
  • 対象顧客・アプローチ方法・目標数値などは箇条書きで整理する
  • 大項目ごとに見出しをつけて、構造を明確にする
  • 申請システムの入力欄の字数上限を意識し、無理に詰め込みすぎない

「伝える力」もまた、補助金申請では大事な審査ポイントの一つです。どんなに優れた取り組みであっても、伝わらなければ評価されません。「内容」と同じくらい「伝え方」にも気を配ることで、採択の確率は確実に上がります。

チェックポイント:採択に近づくために最低限見直したい項目

ここまでご紹介したNG例は、いずれも「ありがちなつまずきポイント」であり、実はほんの少しの意識で防げるものばかりです。とはいえ、申請書の全体像を見直すのは時間も労力もかかる作業。そこで、最後に申請前に見直しておきたい「最低限のチェックポイント」を整理しておきます。

  • 制度の趣旨(販路開拓等)に合致しているか?
     → 自社の取り組みが「販路拡大」や「売上向上」につながることを明確に説明できているか。
  • 誰に・何を・どう届けるかが明確か?
     → ターゲットや施策が具体的で、審査員がイメージしやすい構成になっているか。
  • 経費計上の根拠が適切か?
     → 補助対象経費として妥当な項目か、相見積や内訳の説明に無理がないか。
  • 文章と図・箇条書きのバランスが取れているか?
     → 読みやすさ・伝わりやすさを意識し、重要な数値や対象は視覚的にも整理されているか。
  • 自分以外の人が読んでも理解できるか?
     → 可能であれば、第三者(専門家や社外の方)に目を通してもらい、伝わりにくい箇所をチェック。

これらの視点を踏まえて見直すだけでも、申請書の完成度は大きく変わってきます。補助金は、書類の整合性や合理性を「他人が読む」ものとして評価される場面であることを忘れず、主観だけに頼らず客観的な視点で整えていくことが大切です。

まとめ:採択は「書き方」で決まることもある

小規模事業者持続化補助金の申請において、「事業内容がしっかりしていれば必ず通る」と思われがちですが、実際には「伝え方」も採択の可否を大きく左右します。

制度の目的を正確に理解し、それに沿った形で「なぜ今この取り組みなのか」「誰にどのような効果があるのか」「それにいくら使うのか」を、読み手に伝わるように整理して記載する。この基本が押さえられていなければ、どれだけ実のある取り組みでも評価されにくくなってしまいます。

補助金は、申請して終わりではなく、採択後の事務処理や報告業務も含めて進めるべき中長期のプロジェクトです。その第一歩となる申請書の完成度は、言わば「事業の設計図」。精度が高いほど、その後の事業もスムーズに進みます。

当事務所では、補助金制度の意図を的確に捉えた申請書の構成、伝わりやすい文章作成のサポートはもちろん、採択後の実務支援までを含めたトータルサポートが可能です。

行政書士事務所を始める前に、個人事業主として独立していましたが、そのときは「ライター」というお仕事からスタートしました。その後お客様からのご要望に応える形で、「集客支援・求人支援」へと事業を拡大してきました。そのため、取材の上一つの資料に文章をまとめていくのは大得意なんです!
現在では、行政書士事務所と並行して事業を行っており、中小零細企業の皆様のトータル支援を実施しています!

「申請はしてみたいけれど、このままで通るか不安」「文章にまとめるのが苦手で…」という方は、ぜひ一度ごとう行政書士事務所にご相談ください。
貴社の思いや事業の強みを、しっかりと「伝わるカタチ」に整えていくお手伝いをさせていただきます。

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